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小説

第十一話「霧の向こうのバランス」

「この世界には確かなことなんて何ひとつないかもしれない」「でも少なくとも何かを信じることはできる」 ーー村上春樹『騎士団長殺し』 目が覚めると、あたり一面が霧に包まれていた。 どこまでも白く、静かな世界。まるで音...
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第十話「すべての出会いに、ありがとう」

「大きなこと百個言って、ひとつでも叶えたら、『あの人すごい』になる。だから日頃から口に出して種をまいておくことが重要なのだ。」 ーー宮島未奈『成瀬は天下を取りにいく』 朝、目を覚ますと小鳥たちの囀りがやさしく窓を叩いて...
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第九話「静かな朝と、海に浮かぶ約束」

「自分の人生を生きることを、他の誰かに許されたいの?」 「誰かに遠慮して大事なことを諦めたら、あとで後悔するかもしれないわよ。そのとき、その誰かのせいにしてしまうかもしれない。でもわたしの経験からすると、誰のせいにしても納得できない...
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第八話「不確かな重力、確かなビール」

「答えなんかはないよ。いってるだろう。これは、何をどう選択するか、なんだ。君が自分で選ばなくては意味がない」 ーー東野圭吾『手紙』 夢をみた。 まるで現実の世界を、そのままコピーしたような夢。 境界は曖昧で...
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第七話「造船の街と、未来のレシピ」

「あなたも、信じるものを見つけなさい。あなただけが信じられるものを。他の誰かと比べてはだめ。もちろん私とも、家族とも、友達ともよ。あなたはあなたなの。あなたは、あなたでしかないのよ。」 ーー 西加奈子『サラバ』 木曜日...
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第六話「海に浮かぶ街、太陽のしずく」

「世界は日々変化しているんだよ、ナカタさん。毎日時間が来ると夜が明ける。でもそこにあるのは昨日と同じ世界ではない。そこにいるのは昨日のナカタさんではない。わかるかい?」 ―― 村上春樹『海辺のカフカ』 少し肌寒い朝だっ...
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第五話「記憶の雨と、夢を呼ぶ声」

はるが きて めが さめて くまさん ぼんやり かんがえた さいているのは たんぽぽ だが ええと ぼくは だれだっけ だれだっけ ―― まど・みちお『くまさん』 深くて、深くて、どこまでも潜れ...
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第四話「夢の皮膜、川の魚、パチパチの音」

「疲れを心の中に入れちゃだめよ」 「いつもお母さんが言っていたわ。疲れは体を支配するかもしれないけれど、心は自分のものにしておきなさいってね」 ――村上春樹『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』 鳥の囀...
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第三話「星の街と、緑の声と、俺の背中」

日曜日の朝は、風が違う。 今日はひんやりと涼しくて、空も静かに澄んでいた。 こんな日は、まず植物たちに陽の光を分けてやる。 窓際に並べた多肉植物をそっと持ち上げ、陽だまりの中へ。光が葉に触れた瞬間、彼らはまるで小さく伸び...
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第二話「モフモフとチェーンと夏の予感」

夢の中で、俺はモフモフのトイプードルと全力で追いかけっこをしていた。まるで雲が転がっているような、ふわふわの毛並み。あれが本物だったのか、幻だったのかは知らない。でも目が覚めた時、部屋に残ったぬくもりのような気配に少しだけ救われた気がした...
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