小説第十一話「霧の向こうのバランス」 「この世界には確かなことなんて何ひとつないかもしれない」「でも少なくとも何かを信じることはできる」 ーー村上春樹『騎士団長殺し』 目が覚めると、あたり一面が霧に包まれていた。 どこまでも白く、静かな世界。まるで音... 2025.06.09小説
小説第十話「すべての出会いに、ありがとう」 「大きなこと百個言って、ひとつでも叶えたら、『あの人すごい』になる。だから日頃から口に出して種をまいておくことが重要なのだ。」 ーー宮島未奈『成瀬は天下を取りにいく』 朝、目を覚ますと小鳥たちの囀りがやさしく窓を叩いて... 2025.06.08小説
小説第九話「静かな朝と、海に浮かぶ約束」 「自分の人生を生きることを、他の誰かに許されたいの?」 「誰かに遠慮して大事なことを諦めたら、あとで後悔するかもしれないわよ。そのとき、その誰かのせいにしてしまうかもしれない。でもわたしの経験からすると、誰のせいにしても納得できない... 2025.06.07小説
小説第八話「不確かな重力、確かなビール」 「答えなんかはないよ。いってるだろう。これは、何をどう選択するか、なんだ。君が自分で選ばなくては意味がない」 ーー東野圭吾『手紙』 夢をみた。 まるで現実の世界を、そのままコピーしたような夢。 境界は曖昧で... 2025.06.06小説
小説第七話「造船の街と、未来のレシピ」 「あなたも、信じるものを見つけなさい。あなただけが信じられるものを。他の誰かと比べてはだめ。もちろん私とも、家族とも、友達ともよ。あなたはあなたなの。あなたは、あなたでしかないのよ。」 ーー 西加奈子『サラバ』 木曜日... 2025.06.05小説
小説第六話「海に浮かぶ街、太陽のしずく」 「世界は日々変化しているんだよ、ナカタさん。毎日時間が来ると夜が明ける。でもそこにあるのは昨日と同じ世界ではない。そこにいるのは昨日のナカタさんではない。わかるかい?」 ―― 村上春樹『海辺のカフカ』 少し肌寒い朝だっ... 2025.06.04小説
小説第五話「記憶の雨と、夢を呼ぶ声」 はるが きて めが さめて くまさん ぼんやり かんがえた さいているのは たんぽぽ だが ええと ぼくは だれだっけ だれだっけ ―― まど・みちお『くまさん』 深くて、深くて、どこまでも潜れ... 2025.06.03小説
小説第四話「夢の皮膜、川の魚、パチパチの音」 「疲れを心の中に入れちゃだめよ」 「いつもお母さんが言っていたわ。疲れは体を支配するかもしれないけれど、心は自分のものにしておきなさいってね」 ――村上春樹『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』 鳥の囀... 2025.06.02小説
小説第三話「星の街と、緑の声と、俺の背中」 日曜日の朝は、風が違う。 今日はひんやりと涼しくて、空も静かに澄んでいた。 こんな日は、まず植物たちに陽の光を分けてやる。 窓際に並べた多肉植物をそっと持ち上げ、陽だまりの中へ。光が葉に触れた瞬間、彼らはまるで小さく伸び... 2025.06.01小説
小説第二話「モフモフとチェーンと夏の予感」 夢の中で、俺はモフモフのトイプードルと全力で追いかけっこをしていた。まるで雲が転がっているような、ふわふわの毛並み。あれが本物だったのか、幻だったのかは知らない。でも目が覚めた時、部屋に残ったぬくもりのような気配に少しだけ救われた気がした... 2025.05.31小説