小説第三十二話「伝統とがんばれ」 寝苦しい夜で、何度も目が覚めた。 夢の中で、俺はどこか広くて乾いた場所を歩いていた。 空はぼんやり明るくて、熱気が体にまとわりついてくる。 遠くのほうで、誰かが誰かと笑いながら話している。 水がない。そう思った瞬間... 2025.06.30小説
小説第三十一話「欲しいのは涼しさ、手に入れたのは汗とスパイス」 「思い描く内容がどんなものであれ、まだ起きていないのなら、それは妄想です。」 ーー草薙龍瞬『これも修行のうち』 日曜日の朝は、どこか空気が違う。 それは単に俺が二度寝したからかもしれないし、あるいは地球が今日はち... 2025.06.29小説
小説第三十話「ズボンの穴から世界が見える」 「いかに自分らしく生きたか、最後に残るのはそれだけよ。」 ーー凪良ゆう『星を編む』 とても早く目が覚めた。 窓を開けると、涼しい風がすっと頬をなでた。 梅雨は昨日、明けたばかり。 今日は、久しぶりに完... 2025.06.28小説
小説第二十九話「夏祭りといいね祭り」 「まだなんにも始まってもいないうちから、暗いことばかり並べたててもしょうがないものな。君はもう心をきめたんだ。あとはそれを実行に移すだけのことだ。なにはともあれ君の人生なんだ。基本的には、君が思うようにするしかない。」 ーー村上春樹... 2025.06.27小説
小説第二十八話「クラウンより保険が高い国」 「二度考えるよりは、三度考える方がいい、というのが私のモットーです。そしてもし時間さえ許すなら、三度考えるよりは、四度考える方がいい。ゆっくり考えてください」 ーー村上春樹『騎士団長殺し』 鳥たちが朝から騒いでいる。 ... 2025.06.26小説
小説第二十七話「給料日と賠償金とうどんの湯気」 「人生という大海原に漕ぎ出す時に、その船が誰のものであるか、自分が船長か船員か、船が大きいか小さいかなんてどうでもいい。大事なのは、その船が何を目的として航海をするかだ。」 ーー喜多川泰『手紙屋』 この時期にしては珍し... 2025.06.25小説
小説第二十六話「雨音とアンガーマネジメント」 「事実なんて、どこにもない。ただ、それぞれの解釈があるだけだ。」 ーー凪良ゆう『流浪の月』 雨の音で目が覚めた。 まだ午前二時。 真っ暗な天井を見つめていると、昨日の出来事がするすると脳裏に浮かんできた。ま... 2025.06.24小説
小説第二十五話 「深夜の円陣、昼はうどん会議」 「誰とも競争することなく、ただ前を向いて歩いていけばいいのです。もちろん、他者と自分を比較する必要もありません。」 ーー岸見 一郎/古賀 史健『嫌われる勇気』 深夜0時半。 そいつらは、唐突にやってきた。 ... 2025.06.23小説
小説第二十四話「マルシェで過ごした一日」 「ビスケットの缶にはいろんなビスケットがつまってて、好きなのと好きじゃないのがあるでしょ?それで先に好きなのどんどん食べちゃうと、あとあまり好きじゃないのばっかり残るわよね。私、辛い事あるといつもそう思うのよ。今これやっとくと後になって楽... 2025.06.22小説
小説第二十三話「キングを釣って、シェイカーに敗れる」 「先のことはわからないからなんとも言えないが…。何になるかより、何をやるかのほうが大事だと思っている」 ーー宮島未奈「成瀬は天下を取りに行く」 まだ外は真っ暗だった。 目覚ましが鳴るより先に、胸の高鳴りで目が覚め... 2025.06.21小説