小説第三十四話「ルールなき世界で一列に並ぶ理由」 俺は真っ赤なポルシェで峠を攻めていた。 圧倒的な加速、どんなコーナーも思いのままの旋回性能。そして、唯一無二のデザイン。 まさにドイツが生んだ最高傑作。イタリアの跳ね馬もいいけど、俺は断然、ドイツの跳ね馬派だ。 そんなと... 2025.07.02小説
小説第三十三話「止まる世界、走るカローラ、そして俺は甲板で」 小鳥の囀りで目を覚ます。 「小鳥さん、もうちょっと寝てもいいですか?」 そんな問いかけに、小鳥はもちろん答えない。だけど、俺の心に何かがざわつく。 時計は確実に、あの場所へと向かう時間を刻んでいる。 今日から7月。... 2025.07.01小説
小説第三十二話「伝統とがんばれ」 寝苦しい夜で、何度も目が覚めた。 夢の中で、俺はどこか広くて乾いた場所を歩いていた。 空はぼんやり明るくて、熱気が体にまとわりついてくる。 遠くのほうで、誰かが誰かと笑いながら話している。 水がない。そう思った瞬間... 2025.06.30小説
小説第三十一話「欲しいのは涼しさ、手に入れたのは汗とスパイス」 「思い描く内容がどんなものであれ、まだ起きていないのなら、それは妄想です。」 ーー草薙龍瞬『これも修行のうち』 日曜日の朝は、どこか空気が違う。 それは単に俺が二度寝したからかもしれないし、あるいは地球が今日はち... 2025.06.29小説
小説第三十話「ズボンの穴から世界が見える」 「いかに自分らしく生きたか、最後に残るのはそれだけよ。」 ーー凪良ゆう『星を編む』 とても早く目が覚めた。 窓を開けると、涼しい風がすっと頬をなでた。 梅雨は昨日、明けたばかり。 今日は、久しぶりに完... 2025.06.28小説
小説第二十九話「夏祭りといいね祭り」 「まだなんにも始まってもいないうちから、暗いことばかり並べたててもしょうがないものな。君はもう心をきめたんだ。あとはそれを実行に移すだけのことだ。なにはともあれ君の人生なんだ。基本的には、君が思うようにするしかない。」 ーー村上春樹... 2025.06.27小説
小説第二十八話「クラウンより保険が高い国」 「二度考えるよりは、三度考える方がいい、というのが私のモットーです。そしてもし時間さえ許すなら、三度考えるよりは、四度考える方がいい。ゆっくり考えてください」 ーー村上春樹『騎士団長殺し』 鳥たちが朝から騒いでいる。 ... 2025.06.26小説
小説第二十七話「給料日と賠償金とうどんの湯気」 「人生という大海原に漕ぎ出す時に、その船が誰のものであるか、自分が船長か船員か、船が大きいか小さいかなんてどうでもいい。大事なのは、その船が何を目的として航海をするかだ。」 ーー喜多川泰『手紙屋』 この時期にしては珍し... 2025.06.25小説
小説第二十六話「雨音とアンガーマネジメント」 「事実なんて、どこにもない。ただ、それぞれの解釈があるだけだ。」 ーー凪良ゆう『流浪の月』 雨の音で目が覚めた。 まだ午前二時。 真っ暗な天井を見つめていると、昨日の出来事がするすると脳裏に浮かんできた。ま... 2025.06.24小説
小説第二十五話 「深夜の円陣、昼はうどん会議」 「誰とも競争することなく、ただ前を向いて歩いていけばいいのです。もちろん、他者と自分を比較する必要もありません。」 ーー岸見 一郎/古賀 史健『嫌われる勇気』 深夜0時半。 そいつらは、唐突にやってきた。 ... 2025.06.23小説