第三十六話「チェンソーと血圧計と静音革命」

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気がつくと、俺は廃墟となったビルにいた。

向こうから現れたのは、チェンソーを手にした、あの場所の若い奴だった。

いきなりそいつが俺に向かってチェンソーを振りかぶる。

俺は、またしても、あっちの世界でチェンソーマンと戦っていた。

だが、その刃が俺に届く寸前、目が覚めた。

あっという間に朝が来た。

金曜日。さすがに疲れが出てきた。

身体ってのは、やっぱり正直なものだ。

車に乗ると、今日のラジオでは「ペリーと江戸幕府の外交」について語られていた。

史実では、江戸幕府は決して弱腰ではなかったそうだ。

むしろ、ペリーとしっかり渡り合い、船上晩餐会や相撲公演まで開催したとか。

うまい日本料理を食べながら、交渉のテーブルについたペリーの気持ちを思うと、少し笑えてくる。

今ではなんでも輸入に頼るけれど、本来日本は自国だけでやっていける国だったのだ。

令和の政府よ、江戸幕府で一度政治を学んでこい。

そんなことを思っていると、海が見えてきた。

今朝は霧がかかっていて、霧の向こうには黒く大きなシルエット。

まさか、黒船か?――なんて思っていたら、今日は年に一度の健康診断の日だったことを思い出した。

緊張感の走るあの場所の室内。

室温も空気もピリピリしている。

健康診断は昼からだが、朝から全員ソワソワしていた。

毎年受けているのに、毎年原因がわからない俺の息苦しさ。

まるで、チェンソーマンとの戦いの後遺症みたいだ。

そんな空気をぶち壊すように、掃除機おじさんが登場する。

ブォォォォォ――という掃除機の轟音。

それにイラついたあの場所の住人が、おじさんにキレ始めた。

典型的な「些細なことで争う」現場のはじまりだ。

確かに掃除機の音は室内で響きまくっていた。

それはもう、騒音でしかなかった。

だが、それが掃除機おじさんの仕事なのだから、仕方がない。

こうして「掃除機おじさん 対 あの場所の住人」の仁義なき戦いが幕を開ける。

争いはエスカレートし、ついには血圧計が壊れそうなほどの緊迫感に包まれる。

誰もが「巻き込まれたくない」と知らんぷりを決め込む中、俺は思う。

この戦いは、のちに「掃除機革命」と呼ばれるようになるのではないかと。

数十年後、ダイソンさんはこう語ったという。

「あの二人の争いがなければ、掃除機の進化は100年は遅れていたでしょう」と。

人間の怒りと騒音が、新たなテクノロジーを生む。

これぞ進化の皮肉。

ふと現実に戻ると、向こうではまだ争いの音。

こっちでは安全放送が鳴っている。

そのまた向こうでは、笑い袋おじさんが「ワハハハ!」と笑い声を届けていた。

会議室はどこも満室で、溢れた人々はオンラインで参加している。

昼を告げる鐘が鳴った。

俺は一目散に、うどん小屋へと走る。

今日は珍しく、うどん小屋が空いていた。

そうか、みんな健康診断に備えて食事を控えているのか。

俺はというと、まったく気にせず、うどん出汁を身体に流し込む。

これがないと午後が乗り切れない。

そして、いよいよ健康診断会場へ向かう。

毎年同じ古びたビルに、簡易的に設けられた特設会場。

もちろん、エアコンなんて洒落たものはない。

炎天下の中、長蛇の列に並ぶ俺。

「これ、健康診断で体壊すやつじゃね?」と思いながら、汗を拭う。

あれこれ検査が続き、ついに問診の時間。

現役を引退したおじいちゃん先生が、穏やかな声で俺を呼ぶ。

だが、この部屋にも当然エアコンはない。

おじいちゃん……それ、マジで倒れるぞ……。

それでも「熱中症に気をつけてくださいね」と言うあたり、根性がすごい。

そして、最後にやってくる最大の難関、採血。

俺が最も苦手とするそれ。

心を決めて顔を上げると、そこには、まさかのうどん小屋のおばちゃんが注射器を持って立っていた。

「じゃあ今から、血抜きますね〜」

その一言を最後に、俺の意識はスーッと遠のいていく。

微かに聞こえる、掃除機の音。

俺は、このままあっちの世界に、吸い込まれてしまうのだろうか……?

おでの名前はタケルやで!

ちっこいのは最近、正社員になったダイチや。
旅好きなおでは後輩のダイチと
素敵な場所を
探して日々旅をしとるんやで。
ダイチと旅で見つけた
素敵な場所を
『タケルが行く』で紹介していくのでよろしくや!

ータケルの選手名鑑ー
選手名 タケル
ポジション 投手
背番号 16
利き手 右投げ左打ち
出身地 アルゼンチン
好きな食べ物 リンゴ

ーダイチの選手名鑑ー
選手名 ダイチ
ポジション 投手
背番号 14
利き手 右投げ右打ち
出身地 長崎
好きな食べ物 きびだんご

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