第四十三話「変わらぬ月と、変わるべきは己」

小説
スポンサーリンク

目が覚めた瞬間から、すでにフラフラだった。

金曜日がやってきた。

今夜は満月。7月の満月は「バックムーン」と呼ばれるらしい。

しかも今宵はスーパームーン。一年でいちばん大きく見える満月。

まるで空に浮かぶ巨大な提灯。誰があんなの吊るしたんだろうか。

……たぶん重くて肩こるだろうな。

体調が悪いのか、月のせいなのか、それすらも判断がつかない朝。

とりあえずアイスコーヒーを淹れる。

暑い。いや、暑すぎる。アイスがすぐに溶ける季節が来た。

それでも俺は車に乗り込んだ。

なぜ、こんな状態で“あの場所”に向かうのか?

エリザベス一世が無敵艦隊に立ち向かったように、

俺にも「守るべき土地」があるのかもしれない。

まあ、そこにロマンはない。ただの現場だ。

無敵艦隊は強大だった。

正面からの撃ち合いでは勝てない。

イギリスは風を待った。

潮目が変わるのを信じて、ただ守りを固めた。

大砲の弾が尽きるギリギリで、突如として吹いた“神の風”が流れを変えた。

勝利とは、準備と運が重なる場所にしか生まれない。

凡人が優れたものを引き継げば台無しにし、

明君が続いてもやがて滅びる。

エリザベス一世は、国を飛躍的に良くしたわけではない。

ただ、「悪くしなかった」。

それが、何より難しい仕事なのだ。

文学や教養を学び、感情に流されず、文化を活性化させた。

まとめる力を持ち、何よりバランス感覚に優れていた。

そういうリーダーこそ、今の時代にこそ必要かもしれない。

などと歴史に思いを馳せていると、道の真ん中に鴨がいた。

車道でくつろいでいる。

「そこ、遊ぶとこじゃないぞ」と呟くが、鴨は一向に動かない。

こっちも引き返せない。

エリザベスならどうしただろう。たぶん、気高く迂回するんだろうな。

あの場所に着く。気力も体力も尽きかけていた。

これで一日乗り切れるんだろうか。

でも、始まってしまえば日常は動き出す。

いつものチャイムが鳴る。

「人は忙しい方がイキイキする」なんて言葉もあるけれど、あの場所には活気なんてなかった。

エアコンも金曜日仕様でお疲れ気味。

ため息のリズムがBGMになる。

そんな中、昼の鐘が鳴った。

うどん小屋、今週最後の営業。

迷わず「牛しぐれうどん」を注文。

スープの表面に浮かぶ脂が、希望に見えた。

これで午後もなんとか生き延びられそうだ。

うどんをすすりながら、ふと思った。

**「人を変えるって、無理だな」**と。

どれだけ言葉を尽くしても、人はそう簡単には変わらない。

だから、変わるなら自分。

いや、変わるというより“整える”のが正しいのかもしれない。

彼を知り己を知れば、百戦して殆うからず。

孫子の言葉が、スープの底から立ちのぼる。

まずは、相手を知ること。

そして、自分がどう動くかを考えること。

戦いは、いつの時代も変わらない。

でも、勝とうとしなくてもいい。

「負けない戦い」を積み重ねること。

それが今の時代の生き方なのかもしれない。

午後、スピーカーから選挙のお知らせが流れてきた。

「選挙に行きましょう」と、いつもの声が。

来週、この国の風向きが変わるかもしれない。

嵐の前の静けさのなか、ふと、空を見上げた。

満月がこちらを見下ろしていた。

まるで何もかも知っているような顔で、

それでも何も言わず、ただ静かに、まっすぐに。

今夜、あの光の下に世界中の誰かが希望を託し、誰かが涙を流し、誰かが牛しぐれうどんをすする。

変わるのは、きっと月ではない。

変わるのは、ここに立つ、この足だ。

さあ、帰ろう。

月の引力に背中を押されながら。

おでの名前はタケルやで!

ちっこいのは最近、正社員になったダイチや。
旅好きなおでは後輩のダイチと
素敵な場所を
探して日々旅をしとるんやで。
ダイチと旅で見つけた
素敵な場所を
『タケルが行く』で紹介していくのでよろしくや!

ータケルの選手名鑑ー
選手名 タケル
ポジション 投手
背番号 16
利き手 右投げ左打ち
出身地 アルゼンチン
好きな食べ物 リンゴ

ーダイチの選手名鑑ー
選手名 ダイチ
ポジション 投手
背番号 14
利き手 右投げ右打ち
出身地 長崎
好きな食べ物 きびだんご

タケルとダイチをフォローする
小説
スポンサーリンク
タケルとダイチをフォローする
タケルが行く

コメント

タイトルとURLをコピーしました