第四十二話「青眼の白竜より請求書が怖い」

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気がつくと朝が来ていた。

清々しい朝とは程遠い、どこか鉛のように重たい倦怠感。

布団の中でまどろみながら思う——起きるのが、つらい。

あぁ、大海原に浮かんで、クラゲのようにただ漂っていたい。

やがて現実が容赦なく呼び戻す。

車に乗り込んでエンジンをかける。

今日も、あの場所へ行くのか……。

俺はひとつ、大きなため息をついた。

憂鬱が、胸の奥にしっかりと居座っている。

道すがら、マネジメントについて考える。

今の社会は「信用」で成り立っている。

お金もそう。信用がなければ、数字はただの幻。

そしてこの時代を生き抜くには、その幻に乗る覚悟が必要だ。

ラジオからは、エリザベス一世についての話。

人を傷つけず、モチベーションを保ち、的確に指示を与える——

そんな芸術的マネジメントを体現した女王。

決断しない強さ、絶妙なバランス感覚、まさに綱渡りの女帝。

「明君は、時の采配によって生まれる」——

その言葉に、思わず涙が滲んだ。

車窓から海岸が見えた。

魚たちが朝ごはんをついばんでいる。

その健気な姿に癒されて、カメラを構えるも、

シャッター音を聞いた瞬間に、全員が一斉に逃げた。

……ごめんよ。

無警戒に見えて、常に警戒している。

自然界の生き物は、生きることに一所懸命だ。

命がけで、今日を生きている。

俺もまた、あの場所の門をくぐる。

戦場のような職場——いや、戦場と呼ぶには、あまりに牧歌的な風景。

気づけば意識が飛んで、深い眠りについていた。

夢の中、あっちの世界の門が見える。

踏み込もうとしたそのとき、現実の鐘が鳴った。

……そろそろ請求書を整理しなくてはいけない。

俺の一番重要な仕事だ。

今日も部署をグルグル回って、請求書作成のお願いをする。

「仕事とはいえ、俺は何をやってるんだろうな」

自動化の波が押し寄せるこの時代に、手入力の請求書。

まだ手書きじゃないだけマシか?

ハンコをペタペタ。これはこれで楽しい。

シャチハタって、偉いよな……。

「今月もおつかれさまです」

そんな挨拶をしながら請求書の回収だ。

なかには「自分、何やったか覚えてないんですけど」と言うやつもいる。

いや、お前、夢の中で仕事してただろ。

そいつも、あっちの世界に行く派なのかもしれない。

中小企業の管理職には、簿記3級が必須だと俺は思ってる。

簿記3級はコスパ最高の資格。

知識が現場で生きる、数少ない“ガチ”のやつだ。

そんな思索をしているうちに、うどん小屋の鐘が鳴る。

うどん小屋までダッシュする俺。

なぜか太ももが筋肉痛。あれ?何したっけ?

腰痛も年々ひどくなる。もうボロボロだ。

塩分を体内に補給して、エネルギーチャージ。

健康診断の結果が返ってくるのも、もうすぐ。

俺のうどんライフが、何らかの通知表として記されていることだろう。

午後からは、管理職の会議。

テーマは「マネジメント」だそうだ。

どうせまた、生産性のない無駄な時間が流れていくのだろう。

そう、今日も俺は午後から人生で最も無駄な時間を過ごすことになる。

自分のメンタルだけはマネジメントしないと、やってられない。

精神統一。無駄な発言はしない。

俺にはエリザベス一世がついている(気がする)。

明君は、時の采配によって生まれる。

あの場所の明君が現れる日は……来るのか?

管理職たちは今日も、休憩時間にカードゲームに夢中だ。

彼らには、あの会議室がカードショップに見えているらしい。

本気で海馬コーポレーションに就職したつもりなのか。

腕にはデュエルディスク。まじでつけてる。

いっそそのまま、カードの世界から帰ってこないでほしい。

青眼の白竜とブラックマジシャンが、きっと君を待ってる。

まぁ、言いたいことは山ほどあるけど、

俺は俺の“デュエル”を続けるとしよう。

この、綱渡りのような世界で——。

おでの名前はタケルやで!

ちっこいのは最近、正社員になったダイチや。
旅好きなおでは後輩のダイチと
素敵な場所を
探して日々旅をしとるんやで。
ダイチと旅で見つけた
素敵な場所を
『タケルが行く』で紹介していくのでよろしくや!

ータケルの選手名鑑ー
選手名 タケル
ポジション 投手
背番号 16
利き手 右投げ左打ち
出身地 アルゼンチン
好きな食べ物 リンゴ

ーダイチの選手名鑑ー
選手名 ダイチ
ポジション 投手
背番号 14
利き手 右投げ右打ち
出身地 長崎
好きな食べ物 きびだんご

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