第四十九話「個性漂流地図2025」

小説
スポンサーリンク

どこか遠くの世界から戻ってきたような感覚がある。

けれど、どこから来たのかが思い出せない。

気づけば、あっという間に朝がきていた。

カーテンを開けると、空は雲に覆われていた。

天気予報では、今日は雨になると言っていた気がする。

木曜日。週の真ん中を越えたはずなのに、一番しんどい日だといつも感じる。

ベッドの横には、空きかけのシーバスリーガル12年。

あっという間の朝は、こいつの仕業だったのかもしれない。

リビングに行くと、カピバラのタケルとダイチも眠そうな顔で起きてきた。

「おはよう」と声をかける。少しだけ日常が戻ってきた気がした。

玄関を出ると、庭のブルーベリーが青い実をつけていた。

朝日がまぶしくて、空を見上げると、晴れ間に真っ黒な雨雲が浮かんでいた。

赤とんぼが、雨雲と青空の境界をひらひらと飛んでいく。

車に乗り込む。エンジンをかけると、ラジオが東インド会社の話を流し始めた。

ヨーロッパの歴史を学ぶと、必ず登場するあの会社。

中でもオランダ東インド会社は最強だった。

理由は、金があったから。つまり資本の力だ。

世界初の株式会社。

有限責任。リスクとリターンの分離。

なるほど、難しいけれど今の世界の原型みたいな話だ。

そんな資本主義の話を聞きながら、俺はあの場所へ向かって車を走らせる。

目の前には、黒い雲が垂れ込めている。

まるで闇に覆われた魔王の城のような、あの場所。

そこには、個性豊かな敵キャラたちが待ち構えている。

まず現れたのは、歩きスマホ野郎。

おそらく一番の雑魚キャラだけど、油断していると事故になる。

次に、暴走チャリおやじ。

ランニングお兄さんが汗だくで駆け抜ける。

海馬コーポレーションの派遣社員たちが、それぞれの部署へ散っていく。

金金おじさんは「それ、もう振込済み?」と今日も金にうるさい。

最強の事務員は、無表情のまま書類をさばいていく。

やれやれおじさんは、今日も「また会議か…」と天を仰いでいた。

そして常連のひとりになった、笑い袋おじさん。

タイミングも文脈も関係なく、突如として爆笑を響かせる。

誰もがスルーするが、誰もが気にしている。そんな立ち位置に落ち着いたようだ。

今日の新顔は三人。

ひとり目、「金髪マッシュルーム」。

ふんわり整えられた金髪のマッシュヘアに、曇りのない眼差し。

手には最新型のスマートデバイス。たぶんAIを5体くらい飼っている。

服は真っ白で汚れひとつない。ミントの香りが風に混じっていた。

ふたり目、「ロン毛くん」。

肩まで伸びた黒髪を、サッと耳にかけている。

視線は常に遠くを見ていて、なにかを企んでいるような、あるいは何も考えていないような。

朝から缶コーヒー片手に、なぜかタバコを吸っているふりをしている。火はついていない。

そして三人目、「無口の住人」。

誰よりも静かにその場にいる。目立たないのに、いるだけで妙に空気が張り詰める。

存在感というより、質量のある沈黙。言葉がない分、逆に印象が深くなる。

おそらく誰とも話していないが、全員が彼の名前を覚えている。不思議な人だ。

この場所のキャラクターたちは本当に個性的だ。

グッズを出してもたぶん売れない。けど、やたらと記憶には残る。

はじまりを告げる鐘が鳴った。

同時に、空から雨が落ちてきた。

まるで梅雨入りしたかのような、湿気をまとった空気。

外はサウナみたいだ。ありがとう、エアコン。

昼になり、うどん小屋を告げる鐘が鳴る。

傘をさして、雨の中うどん小屋へと向かう。

雨の日はだいたいいつも満員だ。

今日はきつねうどんを注文した。

七味は多め。というか、七味うどんと呼んでもいいくらいだ。

汗をかきながら、うどんをすすった。

身体の内側から熱が吹き出す。

スープを飲み干すと、底には七味がびっしり沈んでいた。

まるで煮えたぎる池のようだった。

そのあと、またあの場所へ戻る。

さすがに七味を入れすぎたか。胃が少し痙攣してきた。

海馬コーポレーションの派遣社員たちが、昼のデュエル会場へ向かっていく。

中にはコスプレで出陣する者もいた。さすが名門の派遣だ。

もし東インド会社からの派遣社員が来たら、たぶん一瞬で彼らは撤退するだろう。

雨は、明日の朝まで降り続くらしい。

昼休み、俺はまた向こうの世界へ行く。

あっちの世界では、どんなことが待っているのか。

俺は、ふたたびこの世界に戻ってこられるのか。

深い深い眠りにつく。

願わくば、次に目を覚ましたときは

虹のかかる、晴れた世界でありますように。

あたらしい大陸をめざして

俺は静かに、船を漕ぎ出す。

おでの名前はタケルやで!

ちっこいのは最近、正社員になったダイチや。
旅好きなおでは後輩のダイチと
素敵な場所を
探して日々旅をしとるんやで。
ダイチと旅で見つけた
素敵な場所を
『タケルが行く』で紹介していくのでよろしくや!

ータケルの選手名鑑ー
選手名 タケル
ポジション 投手
背番号 16
利き手 右投げ左打ち
出身地 アルゼンチン
好きな食べ物 リンゴ

ーダイチの選手名鑑ー
選手名 ダイチ
ポジション 投手
背番号 14
利き手 右投げ右打ち
出身地 長崎
好きな食べ物 きびだんご

タケルとダイチをフォローする
小説
スポンサーリンク
タケルとダイチをフォローする
タケルが行く

コメント

タイトルとURLをコピーしました