第四十五話「マルシェごはん、ひと口ずつの夏」

小説
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喉の渇きで目が覚めた。

窓を開けると、夜の熱気がまだ少し残っていた。熱帯夜だったんだと思う。

少しぼんやりしながら、水を飲み、ゆっくりと目を覚ましていく。

SNSの投稿はこれで1001件目。節目のような朝。

今日はイベントの日。タケルとダイチも準備万端で、麦わら帽子をかぶってこっちを見ている。

会場に着くと、少し雲がかかっていて、気持ちのいい風が吹いていた。

出店者さんにあいさつを交わして、準備が始まる。

「おはようございます、今日もよろしくお願いします」

出店者さんたちの顔を見ると、不思議と気持ちが落ち着く。

設営を始めると、やっぱり暑い。

じわじわと汗がにじんできて、でも身体が動くのは、どこか楽しいからかもしれない。

タケルとダイチも、自分なりにお手伝いしてくれる。

会場のすぐそばには五重の塔があって、見晴らしもいい。

田んぼの緑が風に揺れていて、セミの声がにぎやかに響いてくる。

こんな場所で過ごせることが、なんだかうれしい。

お客さんが少しずつ会場に入ってくる。

まだ午前の早い時間。空気には涼しさが残っていて、木陰にはやさしい風が通っていた。

「おはようございます」

「アイスコーヒーをひとつお願いします」

そんなやりとりを交わしながら、豆を挽いて、ハンドドリップで丁寧に淹れていく。

湯気とともに立ちのぼる香りが、ほんの少し空気に混ざっていく。

少し手が空いたタイミングで、向かいの出店者さんのピザが焼き上がった。

生地のふちがパリッと香ばしく、チーズはとろりと伸びる。

焼きたてをいただいて、木陰でひと息。

身体の中に、ゆっくりとエネルギーが戻ってくる感じがした。

そのあと、かき氷を買った。

氷の透明感と、ほんのり光るシロップの色が夏の光に映えて美しい。

ひと口すくって口に入れると、細かく削られた氷がふわっと溶けて、体の芯まで冷たさが届いた。

そして、もうひとつ。

テーブルに並んでいたクッキーに目がとまる。

厚めに焼かれたそのクッキーは、見た目からしてただものじゃない。

小麦と発酵バターの香りがふんわりと立ちのぼり、袋越しにもその存在感が伝わってくる。

ひとつ口にすると、ザクッとした歯ごたえのあとに、ほろりとした口どけ。

クッキーの香ばしさと、やさしい甘さが広がって、余韻まで心地よい。

イベントに来ているというより、季節の中をゆっくり歩いているような時間だった。

マルシェの空気は、いつも心を少しやわらかくしてくれる。

昼が近づくと、日差しもだいぶ強くなってくる。

「暑いですね」と出店者さん同士で声をかけ合いながら、それぞれがそれぞれの場所でがんばっている。

お昼ごはんは冷麺にした。よく冷えたスープが、身体の奥まで染みわたっていく。

合間には、いろんな出店者さんと話をした。

それぞれの工夫や取り組みを聞くのは、ほんとうに勉強になる。

次のイベントに向けて、また少し視野が広がった気がした。

イベントが終わりに近づくと、少しずつ片付けが始まる。

陽射しは今日いちばんの強さだったけれど、どこか心地いい疲れがあった。

最後のお楽しみは、俺の大好きなお店のホルモン焼きそば。

タレがしっかり絡んだ麺と、ホルモンのコク。ひと口ごとに今日を振り返るような味がした。

すべて片づけて、車で家に戻る。

焼きそばのパックを片手に、荷物を降ろし終えた瞬間、大粒の雨が降り始めた。

急なゲリラ豪雨。イベントの時じゃなくてよかったと、心から思った。

濡れた庭に立ち尽くしていると、雨がやんで、雲の隙間から夕陽が差し込んできた。

冷えた地面に柔らかな光が落ちて、風がすっと通り抜ける。

ああ、今日もいい日だったなと思う。

スマホを見ると、応援していたチームはサヨナラ負け。

でも、今日はなんだかそんなことも受け止められる。

たくさんの人と話して、たくさんの美味しいものを食べて、ちゃんと生きてる感じがした。

今日も、ごちそうさまでした。

おでの名前はタケルやで!

ちっこいのは最近、正社員になったダイチや。
旅好きなおでは後輩のダイチと
素敵な場所を
探して日々旅をしとるんやで。
ダイチと旅で見つけた
素敵な場所を
『タケルが行く』で紹介していくのでよろしくや!

ータケルの選手名鑑ー
選手名 タケル
ポジション 投手
背番号 16
利き手 右投げ左打ち
出身地 アルゼンチン
好きな食べ物 リンゴ

ーダイチの選手名鑑ー
選手名 ダイチ
ポジション 投手
背番号 14
利き手 右投げ右打ち
出身地 長崎
好きな食べ物 きびだんご

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