第三十話「ズボンの穴から世界が見える」

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いかに自分らしく生きたか、最後に残るのはそれだけよ

ーー凪良ゆう『星を編む』

とても早く目が覚めた。

窓を開けると、涼しい風がすっと頬をなでた。

梅雨は昨日、明けたばかり。

今日は、久しぶりに完全オフの土曜日。

夜明け前の海を目指して車を走らせる。

夏の海は、やっぱり気持ちがいい。

もやに包まれた幻想的な太陽。

自然がつくり出す芸術作品みたいな朝焼け。

池のように穏やかな海。

島々が連なる瀬戸内海。

芸術の島と呼ばれるそのひとつひとつを、船で巡る。

釣り糸を垂らす。

静かな時間が、ゆっくりと流れていく。

……そう、それがいいんだよな。

穏やかに見えても、やっぱり海。

場所によっては流れも速いし、波も高い。

遠くから見る景色と、近くで向き合う景色はまるで違う。

魚を求めて、島々をぐるぐると回る俺。

「今日はクルージングだな」なんて思っていたら、

突然、竿に強烈なアタリが来た。

魚とのやり取り。

向こうだって、必死だ。

そして――釣り上げたのは、かつて“幻の魚”と呼ばれたやつだった。

……そう、かつてはな。

今では一番よく釣れる魚になりつつある。

海も、変わっていく。

俺が子供の頃に釣っていた魚も、今ではすっかり姿を消した。

自然の変化。

いま当たり前のことが、数年後には当たり前じゃなくなる。

人も魚も、同じだ。

未来なんて、誰にもわからない。

さらに釣りを続けると、ポロポロと釣れはじめた。

やっぱり、釣れると楽しい。

日がのぼりきって、気温が一気に上がる。

太陽がそろそろ本気を出しはじめた。

そろそろ引き上げよう。

夏は、暑さとの戦いでもある。

今日も、自然の恵みに感謝です。

帰り道、途中で立ち寄ったお気に入りの店で、骨付き鳥をかぶりつく。

これもまた、至福の贅沢。

こちらは生き物に感謝です。

家に戻り、釣り道具を片付ける。

洗い場の隅に、いつも仕事に履いていくズボンが置いてあった。

ふと見ると、なんと穴が空いている。

「お前も、よく頑張ったな」

ズボンに感謝を伝えて、新しいズボンを求めて街へ出た。

今では、どこに行っても安くて品質の高い服が手に入る。

けれど――忘れちゃいけない。

“安くて高品質”が大量に作られているということは、

世界のどこかで、それを作ってくれている人がいるということだ。

いわゆる「ファストファッション」。

この仕組みを知ること、本やドキュメンタリーに触れることは、とても大切だ。

物事の流れや構造を知ること。

それは、この複雑な世界で生きる、俺たちにいま一番必要なことだと思う。

それは、歴史を学ぶことにも似ている。

過去に学び、現代に生きる。

けれど――

過去を知ったからといって、未来がわかった気になってはいけない。

未来は、永遠に“未来”だ。

だからこそ、今この瞬間を大切に生きる。

食事をするときは、食事に集中する。

車を運転するときは、運転に集中する。

遊ぶときは、とことん遊ぶことに集中する。

そう、これが俺たちにできる“全集中”ってやつだ。

心を燃やせ。

そして、強く生きよう。

――新しいズボン、待ってろよ。

タケルとダイチ

おでの名前はタケルやで!

ちっこいのは最近、正社員になったダイチや。
旅好きなおでは後輩のダイチと
素敵な場所を
探して日々旅をしとるんやで。
ダイチと旅で見つけた
素敵な場所を
『タケルが行く』で紹介していくのでよろしくや!

ータケルの選手名鑑ー
選手名 タケル
ポジション 投手
背番号 16
利き手 右投げ左打ち
出身地 アルゼンチン
好きな食べ物 リンゴ

ーダイチの選手名鑑ー
選手名 ダイチ
ポジション 投手
背番号 14
利き手 右投げ右打ち
出身地 長崎
好きな食べ物 きびだんご

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