第三十二話「伝統とがんばれ」

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寝苦しい夜で、何度も目が覚めた。

夢の中で、俺はどこか広くて乾いた場所を歩いていた。

空はぼんやり明るくて、熱気が体にまとわりついてくる。

遠くのほうで、誰かが誰かと笑いながら話している。

水がない。そう思った瞬間、喉の渇きが一気にきて、呼吸もうまくできなくなった。

目を覚ますと、部屋は静かだった。

カーテンの隙間から光が差し込んでいて、日が昇ってるのがわかる。

枕元には、水の入ったコップが置かれていた。

その水を一口飲む。

冷たくはないけど、体が少し落ち着く。

月曜日の朝。

週の始まり。まだ眠気が残ったまま、俺は布団から体を起こす。

今日から新しい仕事用のズボンをはく。

きれいにたたまれたズボンに足を通しながら、「よろしくな」と小さく声に出してみる。

新しいものを身につけると、ほんの少しだけ気持ちが引き締まる。

鏡で身だしなみを整えて、車に乗り込む。

ラジオをつけると、歴史の話が流れてくる。

戦争の時代の話だ。

情報が少なくて、現場の混乱と上層部の判断ミスが、さらに状況を悪くしていったらしい。

それでも出てきた命令は「がんばれ」だった。

がんばれ。

それだけでなんとかなるような話じゃない。

でも、それが当時の精一杯だったんだろうなと、少し思う。

あの場所に着く。

梅雨が明けたばかりで、朝から気温が高い。

日差しが強くて、空気が重たい。

入り口で始業の鐘が鳴る。

今週も、また始まった。

あの場所の空気は少し重たい。

すれ違う人たちの表情も、どこかどんよりしてる。

みんな、週のスタートにまだ追いついてない感じだ。

今日は朝から会議がある。

でも実際は、会議というより“報告会”に近い。

上の人たちが話す内容には具体性がなくて、出席してるみんなもただ時間が過ぎるのを待ってるような雰囲気。

団結とか、方向性とか、そんなものは感じられない。

昼前になって、俺はうどん小屋へ向かう。

外はさらに暑くなってる。

歩いていると、汗が首から背中にかけてじわっと流れてくる。

うどん小屋には、新しいおばちゃんが立っていた。

俺は、いつものように裏メニューの「牛しぐれ煮トッピング」を頼んでみる。

おばちゃんは、戸惑うことなく牛しぐれ煮をうどんの上にのせてくれた。

初めて見る顔だけど、なんの違和感もなく対応してくれたのがうれしかった。

前のおばちゃんが、ちゃんと伝えてくれていたんだなと思うと、ちょっと安心する。

こうやって、どこにでも「伝えていく」ということはあるんだなと感じた。

あの場所に戻ると、メールが届いていた。

「来週から個人面談を始めます。若いメンバーの話を聞いてあげてください」

文面は短くて、少し唐突な印象。

理由や背景の説明もなくて、ただ「やってください」とだけ。

あの場所には、「伝統」って言葉があまり似合わない。

計画も長続きもしない。

なんとなくの空気でその場しのぎの対応ばかりが繰り返されてる。

でも、それもこの場所なりの“伝統”なのかもしれない。

いつも何か新しいことが突然始まる。それが、あの場所のやり方なんだろう。

来週の面談では、自分なりにちゃんと話してみようと思う。

何を言えばいいのか、どこまで伝わるのか、正直わからない。

でも、自分が昔言われてうれしかった言葉を、今度は自分の言葉として誰かに渡してみたい。

「がんばれ」

その言葉は、軽く聞こえることもあるけど——

今の自分なら、少しだけ重みを込めて言える気がしてる。

タケルとダイチ

おでの名前はタケルやで!

ちっこいのは最近、正社員になったダイチや。
旅好きなおでは後輩のダイチと
素敵な場所を
探して日々旅をしとるんやで。
ダイチと旅で見つけた
素敵な場所を
『タケルが行く』で紹介していくのでよろしくや!

ータケルの選手名鑑ー
選手名 タケル
ポジション 投手
背番号 16
利き手 右投げ左打ち
出身地 アルゼンチン
好きな食べ物 リンゴ

ーダイチの選手名鑑ー
選手名 ダイチ
ポジション 投手
背番号 14
利き手 右投げ右打ち
出身地 長崎
好きな食べ物 きびだんご

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