第六十三話「正解のない世界で、僕らは何を選ぶのか」

小説
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海沿いを歩いていると、一枚の紙切れが風に乗ってこちらへ飛んできた。

拾い上げてみると、それはなんとメジャーリーグのチケットだった。

唐突に始まった物語の予感に、俺は素直に乗ってみることにした。

アメリカ行きのチケットを手に、俺は空を飛んだ。

巨大なスタジアム。その存在感に息を呑む。

まるでデパートのように複雑で広大な内部。グラウンドでは、すでに試合が始まっていた。

打席には、あの日本のスーパースター。

ピッチャーが投げる。彼がフルスイングで放った打球は一直線にこちらへと飛んできた。

そして――

俺は、そのボールをキャッチした。

だが次の瞬間、ボールの勢いで吹き飛ばされ、意識を失った。

気がつくと、いつもの世界に戻っていた。

枕元にはあのボール。手にはしびれが残っている。

夢だったのか?いや、あの感触は……。

車に乗り込み、スーパーで朝ごはんを買う。

外には野球のユニフォームを着た学生たちが集まっていた。

彼らはきっと、未来のメジャーリーガーたちなのだろう。

日本のプロ野球だって、まだまだ負けてない。

車のラジオからは、あるユダヤ人少年の話が流れていた。

それはとても重く、胸が痛くなる物語だった。だが、耳を塞いではいけない。

「人格があるのに、人格がない」――その言葉が胸に残る。

つまり、それは“人格の捨象”。

人間が持つ脳の特性のひとつだ。

私たちの脳は、自分が属さない集団に対して、自然と距離を取ってしまう。

たとえば、服装や宗教、外見、言語など。目に見えやすい特徴で他者を「カテゴリ」としてまとめてしまう。

これは悪意というより、脳の処理効率の問題だと言う専門家もいる。

自分たちの集団を守るために、他者を一括りにしてしまう。

それが、時に偏見や差別として現れてしまう。

ドイツとユダヤの関係がそうだったように、悲劇は脳の無意識から始まる。

けれど、脳に善悪はない。

あるのは、その機能にどう向き合うかという、人間の姿勢だけだ。

危うさを自覚し、丁寧に考え、対話を重ねる。

それが必要なんだと、ふと思った。

そんなことを考えているうちに、あの場所にたどり着いた。

虫取り網を持った少年がいた。

夏休みの空気が漂っている。

だが、俺にはまだ夏休みはない。

今日は木曜日。週の疲れが最も色濃く出る日だ。

いつものようにパソコンを立ち上げ、静かに作業を始める。

打ち合わせも何件かある。

何気ない、いつもの日常。だけど、今日はとても重たく感じた。

逃げ出したい。

眠気が体を覆う。

ふと、先日の学習発表会のアンケート結果が届いた。

眠気をこらえながら読み始めると、参加者からの率直な声が並んでいた。

「発表の趣旨が分からない」「何のための会だったのか見えない」。

そうだよな、と俺は自然にうなずいた。

思いつきで人を動かすのは、やっぱり危険だ。

そのリスクが、こうして文字になって返ってきている。

だが、最近の若者は静かに見えて、驚くほど正直だ。

そこが面白い。

感情を込めすぎず、だがしっかり伝えてくる。

このアンケートを読んで、俺の頭も少しずつ冴えてきた。

その時、うどん小屋の鐘が鳴った。

スープを体に流し込み、頭も胃も完全に目覚めた。

午後からは、このアンケートをもとに次の動きを考えよう。

でもふと、あの発案者がこのアンケートを読んだ時のことを思った。

かなりメンタルがやられるだろうな……。

いや、もしかしたら、そこからまた新しい何かを思いつくかもしれない。

この世界に、正解なんてない。

本人が成功だと信じれば、それがその人の正解になる。

失敗から何を拾うか。それが、すべてだ。

アンケートのおかげで、俺の頭は少し冴えた。

そしてうどんスープを一口、また一口と流し込む。

昼からも働ける。たぶん、ちゃんと向き合える。

午後は、このアンケート結果をもとに、発表会の意義や、やり方について考えてみようと思った。

参加者の声は時に鋭く、痛みを伴うけれど、それでも受け取る価値はある。

何かを思いつく人間には、それに付きまとう責任もある。

でも、人は完璧じゃない。間違える。見誤る。

だからこそ、こうして誰かの「声」で、軌道修正していくんだろう。

ふと、あのラジオの言葉がまた思い出された。

「人格があるのに、人格がない」

遠くの誰かを“ただの誰か”としてまとめてしまう脳のくせ。

見慣れない服、聞き慣れない言葉、それだけで「自分と違う」と感じてしまう本能的な反応。

それは、時に争いや差別を生んでしまう。

アンケートに書かれていた声も、どこかそれに似ている気がした。

本質を知ろうとせず、わかりやすい表面に反応してしまうのは、俺たち自身にもある。

でも、それを“脳の性質だから仕方ない”で終わらせてはいけない。

大切なのは、その先にある。

相手の背景や想いに耳を傾け、分類ではなく、個として見ていくこと。

たったひとつの意見に、誰かの真剣が宿っているかもしれない。

俺はうどん小屋を後にした。

再び戻っていく、あの場所へ。

パソコンの画面の向こうにいる人たちも、街ですれ違う誰かも、

きっと誰もが、自分の物語を持っている。

そのことを、俺は今日、少しだけ強く思った。

おでの名前はタケルやで!

ちっこいのは最近、正社員になったダイチや。
旅好きなおでは後輩のダイチと
素敵な場所を
探して日々旅をしとるんやで。
ダイチと旅で見つけた
素敵な場所を
『タケルが行く』で紹介していくのでよろしくや!

ータケルの選手名鑑ー
選手名 タケル
ポジション 投手
背番号 16
利き手 右投げ左打ち
出身地 アルゼンチン
好きな食べ物 リンゴ

ーダイチの選手名鑑ー
選手名 ダイチ
ポジション 投手
背番号 14
利き手 右投げ右打ち
出身地 長崎
好きな食べ物 きびだんご

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