第六十二話「ハトのハーモニーと胸のざわつき」

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気がつくと、俺はあの場所がある街に立っていた。

時計を見る。完全に遅刻だ。もう言い訳のしようもない。

どうしたものか……足が重い。あの場所に向かうのが、正直、辛い。

理由を考えるまでもない。ただ辛い。ただ、行きたくない。

ああ、本当に、どうしてこんなに辛いのだろう。

昨夜はうなされて何度も目が覚めた。夢と現実の区別もつかない。ただ目が覚めて、そしてまた眠って、気づけばまた覚めていた。

朝を迎えたとき、まだ夜の気配が心に残っていた。

こんなに憂鬱な朝は、いつぶりだろうか。

それでも時間は進む。俺は胃の痛みをこらえながら、車に乗り込んだ。

ラジオが喋っているが、言葉は頭に入ってこない。

ただ右から左に抜けていく。内容なんてどうでもよかった。

車窓の外では、セミの合唱コンクールの練習が盛り上がっている。

ハトのハーモニーも、なかなかの出来だ。

川には相変わらず船が沈んでいて、ツバメが空をかすめる。

高校生たちが集まっていて、どうやら今日はボクシングの試合があるようだ。

俺もリングに上がって、誰かと殴り合いたい気分だった。

速攻でKOされる自信はあるが、それでも構わない。

少しだけ、気が楽になる気がした。

でも、本当のところ、俺はまだ憂鬱だ。

理由もなく落ち込むこともあるけれど、今朝のそれは明確に「理不尽」だった。

はじまりの鐘が鳴る。

気になっていた案件のメールを確認する。とりあえず、依頼は関係者に送られていた。

ちょっとだけ、気が楽になる。

そのとき、一通のメールが届いた。

「津波に注意」

日本の遠くで、大きな地震があったらしい。

津波の情報をネットで確認する。

確かに、規模の大きな地震が起きていた。そして実際に、日本のいくつかの沿岸には津波が到達したようだった。

幸い、被害は今のところ小さいようだ。

けれども油断はできない。

あの場所があるこの街は海に近い。

地震と津波への備えは、冗談じゃ済まされない。

命は、自分で守らなければならない。

誰かが守ってくれるとは限らないのだ。

「かならず大地震は来る」と、よく言われる。

だからこそ、備えあれば憂いなし――そんな言葉をかみしめながら、

俺はいつもの「うどん小屋」を目指した。

今日は、きつねうどんにした。いつも通りだ。

出汁の香りが胃の痛みをなだめてくれる。

生きていれば、いろんなことがあるけれど、

こんな日常があることに、心から感謝しなくてはいけないと思った。

ふと、向こうの世界が気になった。

あの、もう一つの世界。

俺は静かに目を閉じる。

――サイレンの音が耳を打つ。

「これから避難訓練を開始します」

放送が流れる。どうやら、こっちの世界でも避難訓練が始まるらしい。

空気が一気にピリつく。

ガスの元栓を確認する人。段ボールを運ぶ人。

その中に、見覚えのある後ろ姿があった。

うどん小屋のおばちゃんだ。

真剣な表情で、災害時のキッチン対応マニュアルを確認している。

……さすが、うどん小屋のおばちゃん。

俺は、彼女の動きを目に焼き付けた。

たぶん、あの慎重さと正確さが、今日のうどんを生き延びさせたのだろう。

訓練は続く。

俺はおばちゃんと一緒に、避難した。

きっと、この訓練が、いつか俺たちの命を救う日が来る。

そう信じたい。

そして、その日ができる限り来ないよう、今をちゃんと生きよう。

おでの名前はタケルやで!

ちっこいのは最近、正社員になったダイチや。
旅好きなおでは後輩のダイチと
素敵な場所を
探して日々旅をしとるんやで。
ダイチと旅で見つけた
素敵な場所を
『タケルが行く』で紹介していくのでよろしくや!

ータケルの選手名鑑ー
選手名 タケル
ポジション 投手
背番号 16
利き手 右投げ左打ち
出身地 アルゼンチン
好きな食べ物 リンゴ

ーダイチの選手名鑑ー
選手名 ダイチ
ポジション 投手
背番号 14
利き手 右投げ右打ち
出身地 長崎
好きな食べ物 きびだんご

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