第六十一話「資本主義の夢が醒める場所」

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目が覚めると、まだ外は真っ暗だった。

時計は午前二時を指している。エアコンを止めて窓を開けると、冷たい風が部屋の中にそっと入り込んできた。ああ、この感じ、好きだなと思う。涼しさが身体をやさしく撫でていく。心地よくて、俺はもう一度、静かに眠りへと戻った。

気がつくと、朝が来ていた。

外の空気が爽やかで、目覚めの頭をすっきりとさせてくれる。窓を開けたままにしておいて正解だった。水筒に珈琲を入れて、玄関を出る。

今年の夏は、どういうわけか夜が涼しい。日中とのギャップが大きすぎて、まるで別の季節が混ざり込んでいるみたいだ。

車に乗る。

ラジオが、人種について語っていた。

日本人、アメリカ人、ドイツ人、ユダヤ人──番組のテーマは「人種と集団の本質」だった。良き集団とは何か。人種の特性とは。なぜ人は、無意識のうちに境界を引こうとするのか。根源的な問いが次々と投げかけられる。

言葉を聞きながら、俺はふと海を見たくなった。

やがて、あの場所がある街に入る。

人が多く集まっていた。体育館のある広場にはテントがいくつも張られていて、「総体」と書かれた垂れ幕が揺れていた。子どもたちの姿もたくさん見える。今日ここで、熱い戦いが繰り広げられるのだろう。

けれど、俺が向かうのは冷たい戦いの場所だ。

ここでは、熱くなったら負けなのだ。

建物に入る。

この場所の数少ない救いは、窓から見える海。

住人でなければ見られない、ある種の絶景だ。

それを眺めるたび、ほんの少しだけ心が安らぐ。

いつものようにタイムカードを押す。

席に座って、パソコンの電源を入れる。

夜の間にも、メールが届いていた。次から次へと人がやって来て、やがて始業を告げる鐘が鳴る。

キーボードを叩く音が、どうしても好きになれない。

パチパチという音が、まるで俺の脳を内側から小突いてくるようで、気持ちが悪くなる。

便利な機械のはずなのに、なぜだかダメージを受けているのはこっちだ。

俺はこの仕事に向いていないんだろうか。

そもそも、向いている仕事ってなんだ。

「好きなことを仕事にすればいい」と言う人もいれば、「趣味は趣味として取っておけ」と言う人もいる。じゃあ趣味って何だ? 特技との違いって何?

考えれば考えるほど、わからなくなってくる。

あぁ、生きるって本当に難しい。

昼の鐘が鳴る。

うどん小屋の合図だ。外は相変わらず灼熱だけど、建物の陰に入ると涼しい風が通り抜ける。

そこだけ、季節が違うような気さえする。

注文したきつねうどんには、揚げが二枚のっていた。

二回に一度の割合でやってくるサービス。

本当にサービスなんだろうか。何かの暗号じゃないだろうか。

やれやれおじさんが、うどんを啜りながら、日傘の必要性についてやけに熱く語っていた。あの人の話は、話題がどこから来てどこへ行くのか、いつも分からない。でも、妙に聞いてしまう。

その横で、俺はスマホで株価を確認する。

日経平均株価は、今日も下がっていた。

資本主義は右肩上がりが前提のシステムだ。進化しなければ生き残れない。停滞は、衰退の始まり。

だけど、もう人類にこれ以上の便利って、本当に必要なんだろうか。

資本主義が崩れはじめている今、この先に残る企業って、どんな会社なんだろう。

俺は、揚げをひとくち噛み締めながら考える。

うどん小屋のうどんは、進化し続けているのだろうか。

いや、俺はこのままでいいと思う。

変わらない味って、ある種の祈りのようなものだ。

ふと、世界の端っこがぐらりと揺れた気がした。

俺はどこかで、何かを置いてきたような気がした。

揚げが口の中でほどける。

そして、俺はふいに別の世界へと旅立っていた。

目が覚めると、あたり一面が砂漠だった。

焼けるような地面。けれど、どこか懐かしい匂いがある。

ここは、どこなんだ──?

資本主義の未来か、それとも夢か。

俺は波に飲まれて、遠い時間の向こうに流れ着いてしまったのかもしれない。

目の前には、油揚げが二枚のった、きつねうどん。

それが、唯一の手がかりだった。

このうどんは、いったい何を意味しているんだろう。

生きるって、きっと、未知との戦いなんだ。

おでの名前はタケルやで!

ちっこいのは最近、正社員になったダイチや。
旅好きなおでは後輩のダイチと
素敵な場所を
探して日々旅をしとるんやで。
ダイチと旅で見つけた
素敵な場所を
『タケルが行く』で紹介していくのでよろしくや!

ータケルの選手名鑑ー
選手名 タケル
ポジション 投手
背番号 16
利き手 右投げ左打ち
出身地 アルゼンチン
好きな食べ物 リンゴ

ーダイチの選手名鑑ー
選手名 ダイチ
ポジション 投手
背番号 14
利き手 右投げ右打ち
出身地 長崎
好きな食べ物 きびだんご

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