第二十三話「キングを釣って、シェイカーに敗れる」

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「先のことはわからないからなんとも言えないが…。何になるかより、何をやるかのほうが大事だと思っている」

ーー宮島未奈「成瀬は天下を取りに行く」

まだ外は真っ暗だった。

目覚ましが鳴るより先に、胸の高鳴りで目が覚める。

釣り人の朝は、夜明けよりも早い。

静かな住宅街を抜け、港に着くころ、ようやく空がうっすらと明るくなり始めていた。

薄暗い桟橋に立ち、俺は深く息を吸い込む。潮の香りと、かすかに感じる朝の冷気。

沖へ出ると、風は止んでいた。

静寂の中、霧が水平線を覆い、まるで別世界に足を踏み入れたかのようだ。

「…まさか、カームベルトか?」

俺の中の“航海士ごっこ”が発動する。

潮の流れはほとんどない。

そういえば、潮は月の引力に引っ張られて動くという。

地球のはるか遠くにある月が、目の前の海を動かすなんて、考えれば不思議な話だ。

でも、のんびり考えてる場合じゃない。釣れないなら場所を変えるまで。

少し沖へ進むと、風が出てきた。

「ふぅ、無風地帯脱出!」

俺の中の航海士がちょっと得意げに囁いた。

再び糸を垂らす。が、クラゲが海を埋め尽くしていた。

まるで「ここでは釣らせねぇぞ」と言わんばかりに。

それでも、根気よくクラゲの薄い場所を探し、ようやく竿をセットする。

最近の釣具の進化には驚かされる。

一昔前は夢の魚だったマダイも、今や割と手軽に狙えるようになった。

……はずなのに、最近は全然顔を見ていない。

今日もダメかと諦めかけたそのとき——。

ギギギッ!

竿が大きくしなった。

重い。ヤバい、これは本物だ。

油断すれば、海に引きずり込まれるほどの力強い引き。

魚と俺の、静かなる死闘が始まった。

巻いては出され、巻いては出される糸。

数十分の格闘の末、ついにそいつが姿を現した。

——海の王。キングと呼ぶに相応しい巨魚。

気がつけば、俺は腕の感覚を失っていた。

でも、釣り上げた。その存在と引き換えに。

「ありがとう。また来世で会おうぜ」

そうつぶやいた瞬間、意識がふっと遠のいた——。

……

目が覚めると、身体中の水分が抜けていた。

どうやら暑さと興奮で軽く脱水になっていたようだ。

水を飲み、玄関を開けると、外はサウナのような湿気と熱気。

ポストには宅配便。

この暑さの中届けてくれる配達員さん、本当にありがとうございます。

届いたのは、ネットで注文していたカクテルシェイカー。

釣りのあとは家バーでひとりカクテル。これもまた休日の醍醐味だ。

動画を見ながら、見よう見まねで振ってみた。

——その瞬間。

「パァン!」

うまく締まってなかったのか、

中の液体がシャンパンファイトのように噴き出した。

リビングがびしょ濡れ。優勝はまだしてないのに。

でも、掃除したら部屋がピカピカになった。

これも学びだ。

失敗なんて存在しない。全部、前に進むためのステップだ。

そして俺は、再びシェイカーを手に取った。

次のステージへ進むために。

明日はイベントだ。

準備を整え、今日は早めに眠るとしよう。

おやすみ、キング。また海で会おうぜ。

タケルとダイチ

おでの名前はタケルやで!

ちっこいのは最近、正社員になったダイチや。
旅好きなおでは後輩のダイチと
素敵な場所を
探して日々旅をしとるんやで。
ダイチと旅で見つけた
素敵な場所を
『タケルが行く』で紹介していくのでよろしくや!

ータケルの選手名鑑ー
選手名 タケル
ポジション 投手
背番号 16
利き手 右投げ左打ち
出身地 アルゼンチン
好きな食べ物 リンゴ

ーダイチの選手名鑑ー
選手名 ダイチ
ポジション 投手
背番号 14
利き手 右投げ右打ち
出身地 長崎
好きな食べ物 きびだんご

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