第二十九話「夏祭りといいね祭り」

小説
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「まだなんにも始まってもいないうちから、暗いことばかり並べたててもしょうがないものな。君はもう心をきめたんだ。あとはそれを実行に移すだけのことだ。なにはともあれ君の人生なんだ。基本的には、君が思うようにするしかない。」

ーー村上春樹『海辺のカフカ』

やっと金曜日だ。

今週はやけに長く感じた。

胸の奥には、うっすら不安が居座っている。

でも、今日は快晴と呼ぶにふさわしい天気。

天気予報アプリを確認すると、ずらりと晴れマークが並んでいた。

二週間先まで太陽の独壇場。

最高気温35度の連続記録に、夏のはじまりを確信する。

帰りには船に燃料を入れなくちゃいけない。

今日は定時ダッシュを決めるつもりだ。

車に乗り込み、あの場所へ向かう。

朝日が道路をまぶしく照らしていた。

今日も歴史のラジオが流れる。俺の先生だ。

歴史ってのは、いつだって見る角度次第。

相互理解の大切さを、何度でも思い出す。

そういえば、猫型ロボットも言ってたっけ。

「どっちも、自分が正しいと思ってるよ。戦争なんてそんなもんだよ。」

傘も長靴もいらない通勤は久しぶり。

足取りが少しだけ軽くなる。

と思ったのも束の間、やっぱりあの場所へ向かう足取りは重たい。

向かい風が強く吹く。

でも妙に心地いい。

まるで自然が「行くな」と言ってるようだ。

朝から山のようなメールが届いていた。

言わせてほしい。メールを考えた人に。

確認が辛いです……。

便利って、もしかしたら人を壊すのかもしれない。

少しぐらい不自由な方が、人間にはちょうどいい。

最近は、あの場所でも「チャット」なるものが導入された。

声に出しながら文字を打てる、ほとんど魔法みたいな代物だ。

見渡せば、みんなデフォルト画面がチャット。

中には、チャットしてりゃ仕事してると勘違いするヤツまで出てきた。

「いいね」「いいね」「いいね」「いいね」

グループチャットでは「いいね」祭りが開催中。

今年の夏は、夏祭りといいね祭りの二本立てらしい。

時代についていけない俺。

それでも、俺は手書きの紙を貫く。

ハンコだって押してやる。

なんでも「世界初」が好きなあの場所。

だからこそ今、「二番じゃダメなんですか?」って、あの人にもう一度言ってほしい。

手元を見ると、蚊が止まっていた。

こいつだけは今も昔も、現地現物主義。ブレないなぁ。

そんな中、業界再編のニュースが飛び込んできた。

俺が関わる業界の1位企業が、2位企業の株を過半数取得。

いわゆる子会社化ってやつだ。

でもさ、「子会社」って名前がどうも好きになれない。

子会社、下請け、孫請け。

いつも得するのは親会社。

これが資本主義ってやつか。

でも日本って、平等を重んじる国じゃなかったっけ?

便利さを求めるあまり、何か大切なものを失いかけてる気がする。

それでも争いはなくならない。

昼の鐘と同時に、梅雨明けのニュースが流れた。

まだ6月ですけど。

四季が消えた日本。

うどん小屋にも、もう四季はない。

あるのは、灼熱の熱気だけだ。

もっとこの時期に雨が降らなきゃ、農作物にも海にも影響が出る。

当たり前にあった梅雨。

当たり前が当たり前でなくなったとき、人はその変化についていけるのか?

未来の俺に、メールで聞いてみようと思った。

その瞬間、スマホが震えた。

チャットの通知。差出人はもうひとつの世界に存在する、もう一人の俺。

「助けてくれ」

短いその言葉が画面に浮かぶ。

俺は目を閉じた。

そして深い眠りとともに、あの世界へ旅立った。

タケルとダイチ

おでの名前はタケルやで!

ちっこいのは最近、正社員になったダイチや。
旅好きなおでは後輩のダイチと
素敵な場所を
探して日々旅をしとるんやで。
ダイチと旅で見つけた
素敵な場所を
『タケルが行く』で紹介していくのでよろしくや!

ータケルの選手名鑑ー
選手名 タケル
ポジション 投手
背番号 16
利き手 右投げ左打ち
出身地 アルゼンチン
好きな食べ物 リンゴ

ーダイチの選手名鑑ー
選手名 ダイチ
ポジション 投手
背番号 14
利き手 右投げ右打ち
出身地 長崎
好きな食べ物 きびだんご

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