第二十一話「うどん出汁の香る夢の底」

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いま君は、大きな苦しみを感じている。なぜそれほど苦しまなければならないのか。それはね、コペル君。君が正しい道に向かおうとしているからなんだ。

ーー吉野源三郎『君たちはどう生きるか』

気がつくと朝が来ていた。

窓を開け、扇風機をつける。

すでに日差しは強い。今日も暑くなりそうだ。

昨日のナイターのハイライト。

助っ人と呼ばれる外国人選手が、見事な逆転満塁ホームランを打った。

お見事です。

だがふと、思う。

日本のプロ野球は、いつまで彼らを「助っ人」と呼ぶのだろう。

アメリカではもう、日本人がメジャーを代表しているというのに。

通勤ルートを車で進む。

パトカーが数台、道を塞いでいる。どうやら事故らしい。

安全第一。足を止めて遠回りし、あの場所へ向かう。

ラジオが今日もしゃべっている。

「戦国の世と権力」について。

絶対的権力を知らない日本人。

なぜ人はネガティブな意見に流されやすいのか。

今という時代の、説明しきれない複雑さ。

朝から頭が熱を持っていた。

あの場所で毎日同じことを繰り返すのは簡単だ。

でも、本当にそれだけでいいのか?

打刻機にカードを差し込む。ピッという音。

始業。朝からエアコンが動いている。ありがたい。

いや、外の熱気がすでに「温めている」というより「熱している」状態なのだから、これは当然の処置だ。

朝は本を読むと決めている。ジャンルは問わない。

ただ、ほんの少しでもあの場所にいるという現実を忘れるために。

始業の鐘が鳴る。

クレーム対応が始まる。

俺の仕事だ。現実だ。

朝の体操で会うおじさんと、「梅雨終わったな」と話す。

終わったというか、「いつ始まった?」という感じの今年の梅雨。

日本の四季ももう消えてしまったのかもしれない。

人が地球を変えた?

いや、そんなに人に力はない。

変わっているのは地球そのものだ。

自然界の呼吸が、時に人間の論理を超えて変化を起こす。

今日も変わらない、あの場所での時間。

昼のうどんまでは、まだ遠い。

腹は減る。何があっても減る。

「腹が減っては戦はできぬ」

いい仕事のために、うどん小屋を目指そう。

……なぜか今日は昼休みのチャイムが鳴らない。

立ち上がると、めまいに襲われた。

ガクンと重力が狂い、視界がぐらつく。

気がつくと、目の前に巨大な建造物。

熱と爆音と振動。

何か知っている……記憶の底にある何か。

恐る恐る近づくと、地面が波打ち、

そこから、熱湯のような海水が噴き出した。

俺は、飲み込まれた。

——気がつくと、目の前にはいつものデスク。

ディスプレイには、さっきの巨大な建造物によく似たものの画像が表示されていた。

うどん、食べに行くか。

ふらふらと立ち上がり、うどん小屋を目指す。

だが、その場所はもう、海の中に沈んでいた。

まるで最初からそこにあったかのように、

潮の香りと、うどんの出汁の湯気が、静かに立ち上っていた。

これが夢なのか、現実なのか——俺にはわからない。

ふと、後ろから声がする。

「暑いねえ、今日も」

振り向くと、そこにはあのうどん小屋のおばちゃんが立っていた。

まるで、最初から消えてなんていなかったように。

手には、湯気の立つ一杯のうどん。

そして、微笑みだけが、ゆっくりと揺れていた。

タケルとダイチ

おでの名前はタケルやで!

ちっこいのは最近、正社員になったダイチや。
旅好きなおでは後輩のダイチと
素敵な場所を
探して日々旅をしとるんやで。
ダイチと旅で見つけた
素敵な場所を
『タケルが行く』で紹介していくのでよろしくや!

ータケルの選手名鑑ー
選手名 タケル
ポジション 投手
背番号 16
利き手 右投げ左打ち
出身地 アルゼンチン
好きな食べ物 リンゴ

ーダイチの選手名鑑ー
選手名 ダイチ
ポジション 投手
背番号 14
利き手 右投げ右打ち
出身地 長崎
好きな食べ物 きびだんご

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