ふたたびここに言葉を置く
身体がやけに重たくて
地球の重力が少しだけ増したような気がする
待つ人を思い浮かべながら
日差しの下、木陰のベンチに腰を下ろす
まだ時間はある
だから、ただ待つ
夏の日差しは強い
けれど秋の風がやさしく頬を撫でる
蝉の声が遠くで響き
青空がゆるやかに広がる
もし、このまま今日が終わってしまったら
それも悪くないと思えるほどに
ベンチに横たわれば
すぐに眠りに落ちてしまえそうだ
お昼の眠気がピークを迎え
世界は少し緩んで見える
ゆとりのある生活とは
こんなひとときのことを言うのかもしれない
車が近くに停まる
だが違う人だった
時計を見れば、約束の時間まであと五分
果たして本当に来るのだろうか
風が心地よく吹く
待ち時間を詩に変えて
言の葉を紡いでみる
その瞬間、突風が通り抜け
時刻表が激しく揺れた
時間は来た
けれど姿は見えない
それでも待つしかない
世の中、思い通りにはいかないものだ
そう思った刹那
聞き慣れぬ音とともに
待ち人は現れた
まさかのカブに跨って
風をまといながら
ご苦労さまです
と、心の中で呟いた
――待つことの重さと軽さを
ひとつの風景が教えてくれた。
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