第七十二話「凪ぎの朝、夏がゆっくり動き出す」

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午前四時。

目覚ましよりも早く目が覚めた。

今日から大型連休が始まる。

初日は沖に出ると決めていた。

まだ寝静まった家をそっと抜け出し、車に乗り込む。

エンジンをかけ、港へ向かった。

外はまだ夜の中。

街灯の光が路面ににじみ、すれ違う車もまばらだ。

港に着くと、地面がしっとりと濡れていた。

どうやら昨夜、雨が降ったらしい。

頬をかすめる空気は夏とは思えないほど冷たい。

思わず深く吸い込む。

エンジンをかけ、ロープを外す。

夜明けが海の向こうからじわじわと近づいてくる。

ライフジャケットを締め、ゆっくりと港を離れた。

波一つない海は、鏡のように静まり返っている。

その水面に、うっすらと朝焼けのオレンジが溶けていく。

空と海の境目が消え、世界がひとつに溶け合うようだった。

遠くでは鳥が低く鳴き、羽音が静寂を切り裂く。

それ以外は、ただ自分と海だけの時間が流れていた。

ポイントに着くと潮は悪くない。

いや、むしろ良い。

胸の奥で期待が膨らむ。

釣り糸を垂らし、息を潜める。

しばらくは全くあたりがない。

なぜだ。潮も時間も悪くないはずなのに。

だが、海の上はただいるだけで心地いい。

時間がゆっくりと溶けていく。

「今日はもう諦めようか」

そんな言葉が心の端に浮かんだとき、ふと、あの名言が頭をよぎる。

――諦めたらそこで試合終了ですよ。

そうだ。

まだ潮止まりまで時間はある。

ポイントを変える。

その瞬間、竿が大きくしなった。

次の瞬間、リールからドラグがけたたましく鳴り出した。

糸が止まらない。どんどん出ていく。

魚は暑さに負けず、全身で抵抗してくる。

海底に突き刺さるような力強い引きだ。

手のひらが痺れ、感覚が薄れていく。

それでも竿を離せない。

駆け引きの間にも、波は一切立たない。

静まり返った海の上で、竿とリールだけが命のやり取りをしている。

やがて、水面の下で銀色の影が翻った。

光を反射しながら巨大な魚が姿を現す。

慎重に船へ引き寄せ、無事に取り込む。

イケスに魚を入れ、再び仕掛けを落とす。

すると立て続けにあたりが来た。

まさに時合い到来。

十分な釣果を得たところで港に戻ることにした。

帰路、巨大なタンカーがタグボートに伴われて進んでくる。

海には海のルールがある。

作業船の邪魔をしない。

それが鉄則だ。

大きく舵を切り、進路を譲った。

港に着くと、涼しい風が頬をなでた。

船をロープで固定し、イケスを覗くと、釣った魚たちがまだ元気に泳いでいる。

「大きくなってまた会おう」

そう声をかけ、海へ帰す。

片付けを終えると、汗がじんわりと滲んできた。

昼からは明日のイベント準備がある。

家に帰り、安全運転で移動する。

昼食は久しぶりにカップラーメン。

こういう時のジャンクな味は、妙に心を満たしてくれる。

食後、横になるとすぐに眠りに落ち、目を開けたら一時間が経っていた。

午後は黒板にメニューを書き、必要な備品を車に積み込む。

天気予報は夜から雨。

明日も降りそうだが、今回は屋根のある会場だから安心だ。

忘れ物がないか念入りに確認し、準備を終える。

夕方、予報通り雨が降り始めた。

窓越しに外を眺めながら、あっという間に休みが一日終わったことを実感する。

大人の夏休みは、子どもの頃よりも短く感じる。

だからこそ、一日一日を大切にしなければならない。

スマホで野球の結果を見れば、見事な完封負け。

苦笑いしながらも、「明日からまた頑張ろう」と小さくつぶやいた。

おでの名前はタケルやで!

ちっこいのは最近、正社員になったダイチや。
旅好きなおでは後輩のダイチと
素敵な場所を
探して日々旅をしとるんやで。
ダイチと旅で見つけた
素敵な場所を
『タケルが行く』で紹介していくのでよろしくや!

ータケルの選手名鑑ー
選手名 タケル
ポジション 投手
背番号 16
利き手 右投げ左打ち
出身地 アルゼンチン
好きな食べ物 リンゴ

ーダイチの選手名鑑ー
選手名 ダイチ
ポジション 投手
背番号 14
利き手 右投げ右打ち
出身地 長崎
好きな食べ物 きびだんご

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