「自分の人生を生きることを、他の誰かに許されたいの?」
「誰かに遠慮して大事なことを諦めたら、あとで後悔するかもしれないわよ。そのとき、その誰かのせいにしてしまうかもしれない。でもわたしの経験からすると、誰のせいにしても納得できないし救われないの。誰もあなたの人生の責任を取ってくれない」
ーー凪良ゆう『汝、星のごとく』
とても早く目が覚めた。
まだ街は、夢の中を歩いているようだった。
けれど、外の空気にはすでに“目覚め”の気配が満ちていた。濃く潤った空気、湿気を帯びた気温。
梅雨が、もうそこまで来ている。
俺は静かに自分の船を出す。
真っ暗な海の上、誰の声もしない、誰の気配もしない。
けれど確かにそこに、ミズクラゲが無数に揺れていた。
生き物たちは、誰にも知られず、でも確かにこの世界に存在している。
やがて東の空に朝日がのぼり、黒かった海が金色に染まる。
その瞬間、俺の背に降り注ぐ光に、世界が静かに目覚める音がしたような気がした。
釣り糸を垂らす。ただいるだけでいい。
釣れても、釣れなくても、それが釣りってやつだ。
港へ戻ると、まだ朝の早い時間。
街も人も、やっと動き始めたところだった。
ラジオ体操をやってるって聞いて、港に向かう。
でも誰もいない。……あっ、来週だったか。
まぁいい、風が気持ちいいから、歩こう。
すれ違うのは、顔なじみの人ばかり。
この街の空気の中には、安心という香りが混ざっている。
家に戻ると、睡魔がふわりとやってきた。
体が休めと言っている。
久しぶりに、心から安心して眠れるひとときだった。
目を覚ますと、昼になっていた。
急に思い出す。岡山市内に、すごく美味いラーメン屋があるんだった。
今日はそこへ行こう。
明日はイベントだ。
準備もしなくちゃいけないし、たくさんの人と出会う予定だ。
どんな出会いがあるだろうか。
心が少し躍る。
静かな朝、静かな海、そして小さな予定。
こういう休日が、たまに来るから人生は面白い。
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