「試練はいつか必ず訪れます」
「試練は人生の仕切り直しの好機なんです。きつければきついほど、それはあとになって役に立ちます」
ーー村上春樹『騎士団長殺し』
目を覚ました瞬間、不安が胸を締めつける。
理由なんてない。ただ、漠然とした不安がある。
この不安の正体はなんだろう? 明日? 未来? それとも、今日?
同じような毎日。同じような朝。
だけど、俺はまた今日も生きる。
プロ野球のハイライトを見ながら、昨日の延長戦での勝利に少し元気をもらう。
勝つって、やっぱり気持ちがいい。
玄関を開ける。
雨だ。今日も。
海が見える。
港から、ひとつの船が静かに出港していく。
どこへ行くんだろう――ここではないどこかへ。
脳裏にGLAYのメロディーが流れる。
あの頃、何を求めていたっけ。
俺はまた、あの場所へと向かう。
同じ景色、同じ人たち、同じ“おはようございます”。
隣のおじさんの貧乏ゆすりも、今日も絶好調。
若い頃、ドラムでも叩いていたのかな?と思ってしまうくらいのリズム感だ。
最近、ミスが増えた。
自分のミスはまだしも、人のミスの後処理は本当に厄介。
これが“中間管理職”ってやつか。
ポットが湯が沸いたことをメロディーで知らせてくれる。
俺よりよっぽどちゃんと報告してるじゃないか。
「ここって変わったやつ多いよな」と誰かが言う。
「普通って何だよ」と心の中でツッコむ。
「みんな違ってみんないい」なんて理想論、会社では通用しないこともある。
社会にはルールがあって、法律があって、それが“秩序”ってものを作っている。
でも、法律がなかった時代だってあるはずだ。
ルールがなければ、世界はどうなる?
好きなマンガで言っていた――「所詮この世は弱肉強食」って。
じゃあ、“強さ”ってなんなんだろう?
怒鳴ること?
黙って耐えること?
相手をねじ伏せること?
それとも、自分に負けないこと?
強くありたいと思う。
けど、強くなれない日だってある。
今日だってそうだ。
ナイターが始まる。
今夜も勝ってくれ。
勝つってやっぱり嬉しいもんだ。
そう思えるうちは、きっと俺はまだ、大丈夫だ。
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