第十一話「霧の向こうのバランス」

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「この世界には確かなことなんて何ひとつないかもしれない」
「でも少なくとも何かを信じることはできる」

ーー村上春樹『騎士団長殺し』

目が覚めると、あたり一面が霧に包まれていた。

どこまでも白く、静かな世界。まるで音すら霧に吸い込まれてしまったかのように、何も聴こえない。ただ、自分の足音だけが、かすかに地面に反響する。

「ここは…どこだ?」

思考は靄の中に沈み、身体もふわふわと現実感を欠いている。ただ前へ、足を一歩ずつ踏み出す。その先に、突然ぽつんと扉が現れた。古びた木製の扉には、鍵も取っ手もない。

俺は恐る恐る手を伸ばす。触れると、まばゆい光とざわめく音がいっせいに押し寄せ、目がくらんだ。

ハッと息をのんで、目が覚めた。

夢だったのか。それとも、あちらが本当の世界で、こちらが夢なのか。俺は布団の中で一瞬、現実の輪郭を探す。

月曜日。

カレンダーが容赦なく、新しい週の始まりを告げていた。

眠い目をこすりながら朝の支度を整える。もし今日が日曜日だったら、と心のどこかで思うが、それは叶わぬ願いだ。

「逃げちゃだめだ、逃げちゃだめだ。」

エヴァンゲリオンのセリフを心の中で呟きながら、通勤の道を歩く。耳に届くのは、鳥のさえずり、車の走行音、自転車のブレーキ音、人々の足音…。世界は音に満ちている。まるで自分以外が、何かに急き立てられるように動いているように見えた。

会社の玄関に貼られたポスターが目に入る。

「ワークライフバランスを大切に」

俺はふっと鼻で笑った。「バランス」とは、会社が口に出すには少し都合が良すぎる言葉だ。残業が前提の職場でバランスなど保てるのか?本来、仕事は生活の中にある一部。それなのに、どこかで主従関係が逆転してしまっている。

「ライフ・イン・ワーク」ではなく、「ワーク・イン・ライフ」でありたい。

昼休み、ジメジメとした空気がまとわりつく。ニュースでは梅雨入りの報が流れていた。多くの人にとっては鬱陶しいこの季節も、植物や海には必要な恵みである。生きるものすべてにとって、大切なのは“バランス”なのだ。

考えすぎると疲れてしまうから、俺は少し目を閉じてみた。すると、今朝の霧の中の夢がふと頭をよぎった。

あの扉の向こうにあった光と音。それは“この世界”の象徴だったのかもしれない。

それでも思う。

この曖昧な世界の中で、自分という存在が確かにここにいること。

霧の中を歩くように、見えない明日を一歩ずつ歩いていること。

「よし…沖に出るか。」

俺は帰り道、いつもの小さな船に乗った。誰もいない大海原で、静かな波のリズムに揺られながら空を仰ぐ。曇った空の向こうにも、太陽は確かにある。

バランスとは、目に見えるものだけで測れるものではない。

心のどこかに、しっかりと自分の「軸」があること。

それこそが、霧の中で迷わない唯一の術なのかもしれない。

おでの名前はタケルやで!

ちっこいのは最近、正社員になったダイチや。
旅好きなおでは後輩のダイチと
素敵な場所を
探して日々旅をしとるんやで。
ダイチと旅で見つけた
素敵な場所を
『タケルが行く』で紹介していくのでよろしくや!

ータケルの選手名鑑ー
選手名 タケル
ポジション 投手
背番号 16
利き手 右投げ左打ち
出身地 アルゼンチン
好きな食べ物 リンゴ

ーダイチの選手名鑑ー
選手名 ダイチ
ポジション 投手
背番号 14
利き手 右投げ右打ち
出身地 長崎
好きな食べ物 きびだんご

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