第五十四話「未来を見にきた若者と、今日をこなす俺たち」

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ここはどこ?わたしはだれ?

ぼんやりとした意識のまま、天井を見上げる。

昨夜はエアコンをつけなくても寝られた。ほんの少し涼しかった気がする。

朝の空気に夏の終わりの予感を感じながら、俺は身を起こした。

外に出ると、空は分厚い雲に覆われている。けれど雨の気配はない。

湿った風が首筋をなでていった。

そうだ。あの場所に行かなくては。

俺の三連休は、まるで一瞬の夢のようだった。

起きたらもう、いつもの日常が立ちはだかっている。

車に乗り込み、無心でエンジンをかけた。

煩悩を断ち切って悟りの境地に達する。そんなイメージで走り出す。

ラジオからは、禅宗と浄土教についての解説が流れていた。

「坐禅の姿が、すなわち仏の姿であり悟りの姿…」

…うん、やっぱり難しい。

でも少しだけ、わかるような気もする。

車窓から聞こえる、セミの大合唱。

ああ、今週もまた始まるんだなと、無意識につぶやいていた。

あの場所の門をくぐる。

空気が重たい。いや、それは俺の気持ちのせいだ。

始まりの鐘まで、まだ少しだけ時間がある。

だから俺は目を閉じて、意識を向こうの世界へと委ねた。

…気づけば、俺は目を覚ましていた。

ここは向こうの世界なのか、それとも現実の延長なのか。

どちらにせよ、あまり居心地がいいとは言えない。

なぜここにいるのか。

何をしていたのか。

はじまりの鐘が鳴り、すべての思考が打ち消される。

三連休のあとのこの感じ。

先週何をしていたかを思い出すだけで、もう脳が疲れてくる。

この場所から早く抜け出したいという思いと、

それでも自分はここにいるという事実のあいだで揺れる。

「価値観とは…一体」

そうつぶやいたとき、朝のラジオを思い出す。

坐禅とは、何もしないことを肯定する姿勢だったっけ。

無になろう。

そう決めて、会議室の椅子に身を沈めた。

午前中は、恒例の申し送り会議。

中身はいつも通り。なのに時間だけは長い。

時計の針はまだ午前を指している。

昨日買ったタコせんべいをかじりながら、

ふと「これが今の自分の人生の味かもしれない」と思った。

うどん小屋を告げる鐘が鳴る。

外に出ると、蒸し暑さに思わず声が漏れる。

「…あっつ」

風がない。太陽だけがじりじりと照らしてくる。

うどん小屋には、いつものメンバーが集まっていた。

気づけば、このうどんを食べ続けて数年になる。

来週、健康診断の結果が返ってくる。

数字次第では、明日からのうどん小屋の出入りにも影響がある。

ある意味で、うどん小屋年間パスポートの更新審査。

それでも、目の前のうどんはあつあつでうまい。

出汁までしっかりいただいて、手を合わせた。

午後の太陽のもと、再びあの場所へ向かって歩く。

風はなく、空は真っ青。

少しだけ、頭が痛くなってきた。

早く室内に入ろう。

席に戻り、残ったタコせんべいを口に運ぶ。

午後からは学生が見学に来る予定らしい。

彼らの緊張した顔を思い浮かべると、なぜか背筋が伸びた。

「将来、しっかり考えて選ぶんだぞ」

そんな言葉をかけてあげたくなる。

最近の就職は、学生有利の売り手市場。

だからこそ、選ばれる側である俺たちも、

選ばれるにふさわしい場所であらねばならない。

昼の鐘が鳴り、学生たちがやってきた。

緊張しながらも、その顔はどこか希望に満ちている。

若いって、やっぱりいいな。

心から、そう思った。

学生たちは、あの場所を去っていった。

今日もまた、あの場所での一日が終わろうとしている。

残ったメールをさばき、最後の会議をやり過ごす。

生産性ってなんだろう。

誰かのために働いているつもりだけど、

本当に誰かの役に立てているのだろうか。

そんなことを考えながら、ふとタコせんべいの袋を見つめる。

もう中身は残っていない。

袋をそっと丸めて、机の端に置いた。

明日は少しだけ、今日よりも前を向けるといいな。

そんな気持ちで、俺は席を立った。

おでの名前はタケルやで!

ちっこいのは最近、正社員になったダイチや。
旅好きなおでは後輩のダイチと
素敵な場所を
探して日々旅をしとるんやで。
ダイチと旅で見つけた
素敵な場所を
『タケルが行く』で紹介していくのでよろしくや!

ータケルの選手名鑑ー
選手名 タケル
ポジション 投手
背番号 16
利き手 右投げ左打ち
出身地 アルゼンチン
好きな食べ物 リンゴ

ーダイチの選手名鑑ー
選手名 ダイチ
ポジション 投手
背番号 14
利き手 右投げ右打ち
出身地 長崎
好きな食べ物 きびだんご

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