第五十話「働き方改革は門前から」 

小説
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一つの、長くて長くて、どこか遠くの記憶のような物語を読み終えた。

いろんな世界を旅する話だった。

気がつくと、自分もその物語の中にいた気がする。

目が覚めると、雨の音が耳を叩いていた。

しっかりとした、芯のある雨だった。

その雨音の向こうから、小さな鳥の声が聴こえてくる。

こんなに濡れる朝なのに、君たちはどこで鳴いているのだろう。

金曜日。雨降る朝。

今週最後の、あの場所へ向かう日。

山には分厚い雲がかかっていて、まるで世界がまだ目を覚ましていないかのようだった。

ラジオが話し始めた。今日からテーマはガンディー。

「非暴力・不服従」で知られる、インド独立の父。

彼はどうやって暴力に立ち向かい、非暴力を貫いたのか。

なぜ彼の言葉に、人々は心を寄せることができたのか。

きっとその中に、俺が知りたい答えがある。

しっかり聴こうと思った。

気がつくと、あの街に着いていた。

そして、雨の中をあの場所へと歩く。

門の前に立つと、いつもの住人が「働き方改革」の旗を掲げて、なにか語っていた。

だが、その声は雨にかき消されて、何ひとつ聴こえない。

ただはっきりしているのは、この雨の中、朝から門の前に立たされているようでは、何も改革なんてできないってことだ。

俺は雨の中、またこの場所に来た。

あと一日。

長い長い、一日の始まりだ。

はじまりの鐘が鳴るまでは、少しだけ向こうの世界へ行くことにした。

気づけば、どこかの山の上。展望台のある建物にいた。

隣には、廃墟になったリゾートホテルのような建物。

近くには、船で使うフライホイールのような鉄の塊。

展望台からは、広い海が見えた。

俺はこの場所を知っている。

けれど、名前が思い出せない。

こっちの世界では、太陽が大地と海を照らしている。

そのとき、どこからかリズミカルなタイピング音が聴こえてきた。

規則正しいはずの音なのに、なぜだか心がざわつく。

不愉快な気持ちが膨らんでいく。

ふと身体がふらっと揺れて、次の瞬間、俺はあの場所に戻っていた。

耳に残っていたのは、あのタイピング音だった。

あぁ、ストレスだ。

それは、ジワジワと忍び寄って、俺を包み込む。

なぜ、こんなにもこの場所は俺を苛立たせるんだろう。

油断すれば、衝動的になってしまいそうな自分が怖い。

だから思い出す。ラジオの中のガンディーの言葉を。

まずは、午前を乗り切ることから始めよう。

やがて鳴り響く、うどん小屋の鐘。

今日は「牛のしぐれ煮うどん」にすると、朝から決めていた。

最後の力を出し切るために、七味をしっかり入れる。

少し入れすぎたけど、それでも構わない。

牛しぐれの脂が、じんわりと身体に沁みていく。

昼を過ぎる頃、雨が止んだ。

まるで一瞬だけ、梅雨が戻ってきたような空だった。

そして再び、あの場所に戻る。

そのとき、ふと気がついた。

カレンダーを見上げると、いつもより赤い数字が多い。

――あ、三連休だ。

うれしさのあまり、目から雨粒のようなものが落ちていく。

通りで、海馬コーポレーションから来ている派遣の連中も、朝からやけにテンションが高いわけだ。

とくに「笑い袋おじさん」はテンションが上がりすぎて、笑い袋が何度も誤爆していた。

久しぶりの三連休。

みんながワクワクしている。

中には、有給を駆使して五連休にしている猛者まで現れた。

この貴重な三連休、俺も大切に使いたい。

天気予報を見ると、晴れマークがずらりと並んでいた。

最高気温は――…うん、見なかったことにしよう。

それでは、皆さま。

良い週末をお過ごしください。

おでの名前はタケルやで!

ちっこいのは最近、正社員になったダイチや。
旅好きなおでは後輩のダイチと
素敵な場所を
探して日々旅をしとるんやで。
ダイチと旅で見つけた
素敵な場所を
『タケルが行く』で紹介していくのでよろしくや!

ータケルの選手名鑑ー
選手名 タケル
ポジション 投手
背番号 16
利き手 右投げ左打ち
出身地 アルゼンチン
好きな食べ物 リンゴ

ーダイチの選手名鑑ー
選手名 ダイチ
ポジション 投手
背番号 14
利き手 右投げ右打ち
出身地 長崎
好きな食べ物 きびだんご

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