第五十六話「年休カードと鉄の誓い」

小説
スポンサーリンク

とても眠たい。

どうやら朝が来たようだ。

起きたくない。起きれない。

しっかり眠ったはずなのに、まだ眠たい。

歯を磨いて、顔を洗う。

水筒に珈琲を淹れて行こう。あの場所へ。

塩おむすびをひとつ食べて、車に乗り込んだ。

ラジオから、静かに語りがはじまる。

今日のテーマはジャンヌ・ダルク――

女性騎士。そしてフランスの救世主。

彼女は一体、何者だったのか。

予言者? 神の声の媒介者?

素人の戦士でありながら、なぜ勝ち続けたのか。

「人間は、認知フレームで判断コストを下げて世界を把握している」

「だが、その枠に収まらない“バグ”が現れた時、歴史は動く」

戦乱の時代に突如現れた少女。

勝ち続けるしかなかったジャンヌ。

ラジオの声に耳を傾けながら、俺はハンドルを握る。

やがて、あの場所がある街に着いた。

もっとジャンヌの話を聴きたかったが、降りなければならない。

車を降りると、空から聞こえた気がする。

「今日は、あの場所へ行かなくてもいいのでは?」

いや、行かねばならぬ。

今日も真夏の日差しが、刺すように強い。

門をくぐり、歩き出すと向かいから“歩きスマホ野郎”がやってきた。

今日も両耳イヤホンで、あの場所の音を遮断している。

……よほど聴きたくないのだろう。

タイムカードを押し、セミの大合唱に迎えられる。

「今日も頑張ろう」

はじまりの鐘が鳴るまで、深い深い眠りに落ちた。

そして、ふたたび鐘が鳴る――はじまりの合図。

この繰り返しは、いつまで続くのか。

そんなことを考えながら、朝の体操をする。

トルストイの人生論にあったな。

「幸福のために、人は苦痛を経験するのだ」と。

体操をしながら、日に日に痛くなる関節に思わず笑う。

それでも今日も一歩が始まる。

今日は少しドキドキしている。

有給申請の日だからだ。

昔ながらの年休カードに、日付と理由を記入し、事務所へ。

「……はい、これで大丈夫ですよ」

すんなりとハンコを押してもらえて、俺は少しホッとした。

明日は、ついに有給休暇。

メールは山のように溜まるだろうが、それは明日の問題だ。

「今できることをやろう」

そう自分に言い聞かせる。

お盆前のこの時期は、案件がひしめき合う。

「この納期、無理じゃね?」

とつぶやきつつ、今日もパソコンに向かう。

会議室はすべて満室。

いったい何をそんなに話すのか?

そんな疑問を抱きながら、うどん小屋の鐘が鳴る。

命の危険を感じるほどの猛暑。

アスファルトの先に蜃気楼がゆらいでいる。

今日も俺は、うどん小屋を目指した。

さすがに暑すぎたのか、店内は空いている。

俺は熱々のうどんに七味をたっぷりかけた。

一口食べる。辛い、辛すぎる、でも――うまい。

その瞬間、意識が遠のいていった。

目を覚ますと、そこは中世ヨーロッパのような街並み。

後ろから地鳴り。無数の人々が戦っている。

「ここは……どこだ?」

その中に、甲冑をまとった人物がひとり。

まさか……

――うどん小屋のおばちゃんだった。

馬にまたがり、手には熱々のうどんと七味。

敵に七味を振りまいては、次々に倒していく。

兵士たちは、口々に叫んだ。

「うどん小屋のジャンヌ・ダルクだ!」

炎の中を駆け抜ける彼女の姿が、確かに光って見えた。

それはただの妄想か、疲れのせいか――

だが、どこか胸の奥が熱くなっていた。

俺たちも、あの戦場でそれぞれの「小さな戦」をしている。

一杯のうどん、一枚の年休カード、ひとつの納期。

そのすべてに、俺たちのジャンヌ・ダルクは宿っているのかもしれない。

明日は有給休暇。でもきっと、戦いは続いていく。

俺はもう一度、タイムカードの前に立った。

そして、つぶやいた。

「今日も、お疲れさまでした」

おでの名前はタケルやで!

ちっこいのは最近、正社員になったダイチや。
旅好きなおでは後輩のダイチと
素敵な場所を
探して日々旅をしとるんやで。
ダイチと旅で見つけた
素敵な場所を
『タケルが行く』で紹介していくのでよろしくや!

ータケルの選手名鑑ー
選手名 タケル
ポジション 投手
背番号 16
利き手 右投げ左打ち
出身地 アルゼンチン
好きな食べ物 リンゴ

ーダイチの選手名鑑ー
選手名 ダイチ
ポジション 投手
背番号 14
利き手 右投げ右打ち
出身地 長崎
好きな食べ物 きびだんご

タケルとダイチをフォローする
小説
スポンサーリンク
タケルとダイチをフォローする
タケルが行く

コメント

タイトルとURLをコピーしました