第五十二話「夜市に揺れる提灯と、揺らぐこの国の足元」

小説
スポンサーリンク

とてもよく寝られた夜だった。

三連休の真ん中。今日という一日は、少し特別な匂いがする。

朝、新聞をひらけば「選挙へ行こう」の見出しが目に入る。

日本が変わるかもしれない日。いや、変わらなければならない日だ。

夜には夜市もある。

港町の夏が本気を出す夜。

でも、その前にひと仕事。

風が強い予報だったので、早朝のうちに沖に出ようと決めていた。

玄関を出ると、夏とは思えないほど爽やかな風が吹き抜けていった。

蝉の声が遠くから聞こえてきて、港に着いた頃にはもう陽はすっかり高くなっていた。

船を出す準備をする。

先日受けた船舶の安全講習を思い出しながら、燃料、エンジン、通信機、すべてひとつひとつ確認していく。

海は甘くない。確認は怠らない。

ライフジャケットをしっかり着込んで、俺はゆっくりと舫(もやい)を解いた。

風はやはり強く、沖合は白波が立っていた。

無理はしない。風裏になる小島の近くへ回り込む。

帆を上げると、大きな穴が空いているのに気づいた。

あぁ、今年で最後かもしれないな。よく働いてくれた帆だ。

しばらく流していると、さっそく一本。

ピクリとも暴れないのに、妙に重い。

手繰り寄せると、銀色に光る真鯛。立派なサイズだ。

美しい魚だな。何度見ても飽きない。

ふいに、遠くからけたたましい爆音が響いてきた。

海の上にも、暴走族は現れる。

水上バイクに乗った若者たちが列をなして、こちらの船のすぐ脇を猛スピードで通り過ぎていく。

海のお巡りさんの船が見えるけど、なぜか見て見ぬふりだった。

たしかに、海には道がない。

でもだからこそ、個人のマナーと責任がすべてだ。

ルールとは、誰かに守らされるものじゃない。自分で選ぶものだと、俺は思う。

その後、もう一匹真鯛が釣れた。

コン、コン、コン、と竿先をたたくあの引きがなんとも言えない。

けれど、釣れるからといって釣りすぎるのは違う。

自然の命には限りがある。共に生きるというのは、奪いすぎないことでもある。

午前中で釣りは終わりにして、一度港へ戻る。

今日は選挙だ。

タケルとダイチにはまだ選挙権がない。

だからこそ、大人である俺たちが、しっかりとその一票を投じなければならない。

投票所は町の公民館だった。

顔なじみの職員さんに挨拶をして、投票用紙に鉛筆を走らせる。

清き一票、なんて言葉は少し古くさいかもしれないけれど、やっぱり心の中はどこかピンと背筋が伸びる。

昼ごはんは、塩分補給も兼ねてラーメンにした。

夜の夜市に備えて、少し昼寝でもしようかと思ったけれど、結局そのまま海を見に行った。

午後の港は、まだ風が残っていた。

それでも空は晴れて、夏の空気が港町を包みこんでいた。

夕方になると、夜市の準備が始まった。

テントが並び、提灯が吊られ、焼きそばの匂いが風に乗って流れてくる。

町の人たちがぞろぞろと集まってきて、いつもの風景が少しずつ、特別な夜の顔に変わっていく。

顔見知りの人たちと挨拶を交わしながら、輪くぐりで厄を落とす。

子どもたちが金魚すくいに歓声をあげ、太鼓の音が響く。

夜が深まるほどに、伝統の音頭が町を包んでいく。

ひとつひとつの踊りの手ぶりに、この町の記憶が宿っている。

大人も子どもも、一緒になって踊る姿は、まるでひとつの生き物のようだった。

未来に残したいのは、こういう時間なんだと思う。

夜市が終わり、片付けもひと段落ついたころ、ふと思い出した。

そうだ、今日は選挙の日だった。

家に帰ってテレビをつける。

速報が流れ、名前が読み上げられていく。

日本が、少しでも良い方向に進んでいくことを願う。

そのための一票を、俺は今日、たしかに投じた。

夜風が気持ちいい。

タケルとダイチはもう寝ている。

静かな夜だ。

それでも、どこかで何かが動き出している。そんな予感のする夜だった。

おでの名前はタケルやで!

ちっこいのは最近、正社員になったダイチや。
旅好きなおでは後輩のダイチと
素敵な場所を
探して日々旅をしとるんやで。
ダイチと旅で見つけた
素敵な場所を
『タケルが行く』で紹介していくのでよろしくや!

ータケルの選手名鑑ー
選手名 タケル
ポジション 投手
背番号 16
利き手 右投げ左打ち
出身地 アルゼンチン
好きな食べ物 リンゴ

ーダイチの選手名鑑ー
選手名 ダイチ
ポジション 投手
背番号 14
利き手 右投げ右打ち
出身地 長崎
好きな食べ物 きびだんご

タケルとダイチをフォローする
小説
スポンサーリンク
タケルとダイチをフォローする
タケルが行く

コメント

タイトルとURLをコピーしました