第五十九話「旅は風まかせ、夢は夏まかせ」

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目が覚めたのは、いつもよりだいぶ遅い時間だった。

昨夜の夜市での疲れが、まだ体に残っているのかもしれない。

深く眠っていた感覚がある。夢の内容は思い出せないが、向こうの世界の記憶が、かすかに胸の奥に残っている気がした。

窓の外では、今日もセミたちが元気に鳴いている。

そうだ、今日は久しぶりにバイクに乗ろう。

ソロツーリング。

とはいえ、真夏の日差しの中を走るのは無謀すぎるから、朝の涼しいうちだけの短い旅にしよう。

たまにはエンジンをかけてやらないと、機嫌を損ねてしまいそうだし。

バイクカバーを外して、愛車を外に引きずり出す。

……お、おもい。

久々に動かす大型バイクの重さに、早くも汗が吹き出す。

これだけで、すでに一仕事終えた気分だ。

「さて、エンジンはどうかな」

スイッチを押すと、セルモーターの音と共にエンジンが唸りを上げた。

久々の起動だったけれど、思った以上にスムーズにかかってくれた。

さすが俺の相棒だ。いい音だなぁ……

メッシュジャケットを羽織り、ヘルメットと夏用のグローブを装着する。

跨ると、身体が自然にバイクに馴染んでいく。

目的地はない。

ただ風の吹くまま、気の向くまま。

とりあえず東へ向かって、走り出すことにした。

まだ朝の光は柔らかく、空気にもほんの少しだけ涼しさが残っている。

バイクに乗っている間は、風が全身を撫でてくれて、とにかく心地いい。

国道に出て、ゆっくりと走る。

今日は、この道をただひたすら進んでいこうと思った。

日曜の朝だからか、道はすいていた。

暑すぎて、みんな外出を控えているのかもしれない。

時折すれ違うライダーたちが、手を挙げて挨拶をしてくれる。

俺も、それに応える。

いわゆる“ヤエー”というやつだ。

軽く手を上げる人もいれば、全力で手を振ってくる人もいる。

中には、言えないようなポーズで応えてくる人もいて……それは、まぁ、ここでは伏せておこう。

山道に入ると、空気が一変した。

木陰は驚くほど涼しくて、風の中にほんの少しだけ、土と緑の香りが混じっていた。

ああ、これぞ爽やかというやつだ。

道の駅に寄って、ひと休みすることにした。

気がつけば、かなりの距離を走っている。

このあたりで折り返すのがちょうどいい。

真夏の昼間のツーリングは、人にもバイクにも過酷すぎる。

水を飲んで、エンジンを冷ましながら、ぼんやりと周りの景色を眺める。

ライダーたちが続々とやってきては、また走り出していく。

そのひとりひとりに、心の中で「お気をつけて」とつぶやく。

帰り道も、たくさんのライダーとすれ違った。

帰るころには、風は熱風に変わっていた。

涼しさなんて、どこか遠くへ行ってしまったようだ。

それでも、なんとか家までたどり着いた。

さすがに帰りは堪えたな……体力が、がくんと落ちているのがわかる。

バイクを拭いて、カバーをかける。

エンジンに手をかざすと、触れただけで大火傷しそうなほど熱かった。

「今日もおつかれ」

ぽつりと声をかけて、俺は玄関に向かう。

家に入ってすぐ、水分をがぶ飲みする。

冷たい水が、体に染みわたる。

昼は、昨日もらった焼き鳥にしよう。

やっぱり夏は焼き鳥だ。いや、冬も焼き鳥だけど。

要するに、俺は焼き鳥が好きなのだ。

オーブンで温め始めると、すぐに香ばしい匂いが漂ってきた。

この匂いだけで、ご飯三杯はいけそうだ。

昨日買った海苔も添えてみる。

海苔には海の栄養が詰まっているらしいし、なにより美味い。

やっぱり、すべての食べ物に感謝しないとな。

午後になると、少し頭痛がしてきた。

薬を飲んで、横になる。

外は相変わらずの猛暑。無理は禁物だ。

ちょうど今日は、高校野球の地方大会決勝。

勝てば甲子園、負ければ終わりの真夏の熱戦。

球児たちには、悔いのないプレーをしてほしい。

薬が効いてきたのか、まぶたが重くなる。

目を閉じると、ふわりと意識が遠のいていった。

――気がつくと、俺はどこかのイベント会場にいた。

ヨーヨー釣り、金魚すくい、射的。懐かしい風景が広がっている。

スマホを見ると、表示された年は「1986年」。

……俺の生まれた年じゃないか。

どうやら、ずいぶん昔に戻ってきてしまったらしい。

この場所は、俺の生まれた街だ。

懐かしさが胸を締めつける。

通りを歩いていると、見覚えのある顔がちらほらと目に入った。

でも、こっちの世界で話しかけるのは、やめておいたほうがいい気がする。

俺はただ、街を歩いた。

タクシーに乗って、行き先を告げる。

車が動き出すと、やがて景色がゆっくりと溶けていった。

――目が覚めると、夕方だった。

近所で夜市をやっているらしいので、ふらりと出かけてみた。

まだ空は明るかったが、すでに人で賑わっている。

日曜の夜に、夜市をのんびり歩くのも悪くない。

金魚すくいの水面に、夕空の色が揺れていた。

夏って、やっぱりいいな。

おでの名前はタケルやで!

ちっこいのは最近、正社員になったダイチや。
旅好きなおでは後輩のダイチと
素敵な場所を
探して日々旅をしとるんやで。
ダイチと旅で見つけた
素敵な場所を
『タケルが行く』で紹介していくのでよろしくや!

ータケルの選手名鑑ー
選手名 タケル
ポジション 投手
背番号 16
利き手 右投げ左打ち
出身地 アルゼンチン
好きな食べ物 リンゴ

ーダイチの選手名鑑ー
選手名 ダイチ
ポジション 投手
背番号 14
利き手 右投げ右打ち
出身地 長崎
好きな食べ物 きびだんご

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