第五十一話「ばぁちゃんからのプレゼント」

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船に揺られながら、俺は沖へと出ていた。

遠くに、大きな島が見える。

のんびりと釣り糸を垂らし、魚がかかるのを待つ時間。潮の匂いと風が心地いい。

――と思えば、次の瞬間、俺はマリーナに立っていた。

中古の船を眺めながら、これだという一艇を見定めている。

気づけば、釣具屋の棚の前で竿を選んでいた。新しいルアーに手を伸ばしながら、どこかへ釣りに出かけたくてたまらない。

……たぶん、向こうの世界での出来事だったんだろう。

ふと、朝がやってきた。

今日はばぁちゃんの法事がある日だ。

数日前、夢の中でばぁちゃんに会った。

だからきっと、ばぁちゃんもこっちの世界に戻ってきてる気がする。

バイクの音が聞こえる。

それが最近の、俺の目覚まし代わりになっている。

山奥にあるばぁちゃんの家までは、片道2時間の道のりだ。

パソコンをバッグに入れて、数珠をポケットにしまう。

セミの鳴き声を聞きながら、車に乗り込んだ。

街を離れ、山道を登っていく。

途中、シカやタヌキ、サルといった動物たちに何度も出くわす。

野を越え、山を越えて、俺はようやくばぁちゃんの家にたどり着いた。

一年ぶりの再訪だ。

南側の空は晴れていたのに、山の上は分厚い雲に覆われ、しとしとと雨が降っている。

山の天気はほんとに気まぐれだ。

お仏壇に線香をあげたとき、ふと視線の先に違和感。

……お供え物に、巨大な蟻が群がっている。

いや、でかすぎる。これはもう別の生き物なんじゃないかってくらい。

田舎に来たなぁと、しみじみ思った。

こっちの虫は、本当に規格外だ。

それもまた、自然が豊かだからこそかもしれない。

そのとき、草むらの中に黒く輝く何かが見えた。

まさか――と思って目を凝らすと、そこにはクワガタがいた。

子どもの頃の憧れ。

カブトムシと並ぶ、夏の王様だ。

大人になった今でも、クワガタを見ると胸が高鳴る。

今日ここまで来てよかったと、心から思えた。

……とはいえ、法事までにあの蟻たちをなんとかしないと。

ばぁちゃんの家は築百年以上の古民家だ。

木造で、土壁のある、日本の伝統的な家。

だからこそ、家の中にもたくさんの生き物たちが暮らしている。

やがて和尚さんがやってきて、雨の中で法事がはじまった。

静かに手を合わせながら、ばぁちゃんのことを想う。

お墓にも手を合わせて、法事は無事に終わった。

そのあいだだけは、不思議と蟻たちも静かだった。

まるで空気を読んでいるみたいに。

遠く離れて暮らす孫たちも、オンラインで法事に参加した。

そして、生後六ヶ月のひ孫も。

ばぁちゃんに向かって、何かを話しかけるような仕草をしていた。

初めての法事。きっと、ちゃんと伝わっていたと思う。

時代と共に、法事のかたちも変わっていくんだなと思った。

「ばぁちゃん、また来るよ」

そう言って、俺は山を後にした。

帰り道、あの雨が嘘だったかのように空は晴れていた。

ふと寄った道の駅で、大人たちの憧れだった巨大なスーパーロボットの像を見つけた。

……今日は、憧れにたくさん出会う日だった。

クワガタ、スーパーロボット、そして、ばぁちゃん。

もしかするとそれは、全部ばぁちゃんからのプレゼントだったのかもしれない。

おでの名前はタケルやで!

ちっこいのは最近、正社員になったダイチや。
旅好きなおでは後輩のダイチと
素敵な場所を
探して日々旅をしとるんやで。
ダイチと旅で見つけた
素敵な場所を
『タケルが行く』で紹介していくのでよろしくや!

ータケルの選手名鑑ー
選手名 タケル
ポジション 投手
背番号 16
利き手 右投げ左打ち
出身地 アルゼンチン
好きな食べ物 リンゴ

ーダイチの選手名鑑ー
選手名 ダイチ
ポジション 投手
背番号 14
利き手 右投げ右打ち
出身地 長崎
好きな食べ物 きびだんご

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