第五十五話「誰もが騎士で、誰もが疲れてる」

小説
スポンサーリンク

最近、向こうの世界に行くことが少なくなった。

いや、行ってはいるのだろう。けれど気づかないまま、気づけないまま、目が覚めてしまう。

気づけば朝。

そして、いつもの時間が来る。

あの場所へ向かう時間。

あの、海の見える、少し寂しげな、けれど懐かしさが漂うあの場所へ。

身体は正直で、日々少しずつ、けれど確実に弱っている気がする。

頭では「大丈夫だ」と思っていても、足元は違うことを言っている。

そんなことを考えていると、今日もラジオがついていた。

今朝は中世ヨーロッパの騎士について。

争いのないとき、騎士たちは農場の経営をしていたらしい。

武士と似たようなものだな、と少し笑った。

誰でもなれたわけじゃない。けれど、王様も騎士になれた。

騎士には「定義」がなかった。

なのに、限られた者しかなれなかった。

定義がないからこそ、そこには“空気”と“期待”があったのだろう。

そう考えると、サラリーマンも似ている。

定義がない。けれど何かに縛られている。

昔は、大企業に入ることが“騎士の称号”だった。

今はベンチャーやスタートアップ。

騎士の構造に似ている。けれど、やはりどこか違う。

ふと外を見ると、子どもたちがラジオ体操に向かっている。

首からぶら下げたカードが揺れている。

あれは、あれで“勲章”みたいなものだな。

あの場所についた。

海は見える。風は吹かない。

パソコンが、タイムカード用のパソコンが、調子を崩していた。

暑すぎたのだろうか。

強制終了。再起動。まるで自分のようだ。

少し時間はかかったが、無事に立ち上がった。

「お前も、夏休みが欲しいよな」

自分の席につき、パソコンを起動させる。

こっちは、やる気満々だ。

なんだか対照的で、おかしくなった。

はじまりの鐘が鳴るまで、目を閉じる。

向こうの世界には、行けないかもしれない。

けれど、本当はもう行っているのかもしれない。

意識が遠のく。

目を開けると、鐘の音とともに朝の体操の音楽が流れていた。

子どもたちのラジオ体操と同じ音楽なのに、まったく違う気分になる。

セミの合唱が響くなか、身体を動かす。

どんよりとした曇り空。

それでも、始まった。今日という日が、確かに。

その前に、頭痛薬を飲む。

最近はこれが“出陣”前の儀式になってしまった。

ボスは子守でお休みらしい。

静かな空間。淡々と流れる時間。

「俺は、何をしているんだろうな」

午前中が、とにかく長い。

時間の進みが遅い。活気もない。

眠気が襲ってくる。

外へ出た。冷えた身体を夏の空気で温め直す。

やっぱり日差しは強い。刺すような光が、まぶたの裏まで焼いてくる。

うどん小屋の鐘まで、あと少し。

このまま眠らずにいられるだろうか。

ほんの少し油断したら、きっと向こうの世界に吸い込まれる。

「あぁ、俺はなぜ、ここにいるのだろう」

ギリギリで、うどん小屋の鐘が鳴った。

灼熱のなか、小屋には行列ができていた。

今日はなぜ、こんなにも多いのか。

長い列を耐えた先で、きぬねうどんを注文。

いつもは一枚の油揚げが、今日は二枚のっていた。

ラッキー。

あつあつのうどんで、エネルギーをチャージ。

帰り道も灼熱。

額の汗をぬぐいながら、空を見上げる。

空には雲。けれど、その奥に確かに太陽がある。

今夜は、プロ野球のオールスター。

最近は、スターと呼べる選手が少なくなった気がする。

全体のレベルが上がったからこそ、抜きん出る者がいなくなったのだろう。

スーパースターは、いつも海を越えていく。

このままでは、プロ野球も変わっていく。

野球だけじゃない。スポーツ全体のあり方が、変わっていく気がする。

夏の大会。高校野球も始まった。

そろそろ、甲子園の出場校も決まってくる。

いよいよ、本格的な夏が来た。

蝉の声、暑さ、空気の匂い。

すべてが、夏だ。

「夏休みが、欲しいな」

ゆっくりと、そうめんをすする。

冷たい麦茶を飲む。

そんな時間が、心のどこかでずっと鳴っている。

週の真ん中、水曜日。

あぁ、長い一日になりそうだ。

おでの名前はタケルやで!

ちっこいのは最近、正社員になったダイチや。
旅好きなおでは後輩のダイチと
素敵な場所を
探して日々旅をしとるんやで。
ダイチと旅で見つけた
素敵な場所を
『タケルが行く』で紹介していくのでよろしくや!

ータケルの選手名鑑ー
選手名 タケル
ポジション 投手
背番号 16
利き手 右投げ左打ち
出身地 アルゼンチン
好きな食べ物 リンゴ

ーダイチの選手名鑑ー
選手名 ダイチ
ポジション 投手
背番号 14
利き手 右投げ右打ち
出身地 長崎
好きな食べ物 きびだんご

タケルとダイチをフォローする
小説
スポンサーリンク
タケルとダイチをフォローする
タケルが行く

コメント

タイトルとURLをコピーしました