小説第七十三話「雨の日イベントと来た時よりも美しく」 どこかのショッピングモールに来ていた。 広い店内をぶらぶらと歩く。 今日は昼ごはんを食べに来たが、まだ時間には少し早い。 巨大なショッピングモールを一周してみると、吹き抜けの空間に子どもの笑い声が反響し、パン屋の甘い香り... 2025.08.10小説
小説第七十二話「凪ぎの朝、夏がゆっくり動き出す」 午前四時。 目覚ましよりも早く目が覚めた。 今日から大型連休が始まる。 初日は沖に出ると決めていた。 まだ寝静まった家をそっと抜け出し、車に乗り込む。 エンジンをかけ、港へ向かった。 外はまだ夜の中。 ... 2025.08.09小説
小説第七十一話「カピバラ警備員、銀行トラブルに出動せよ」 朝を迎えた。 さっきまで向こうの世界にいたような感覚が残っているが、記憶は曖昧で、ただ身体が重たい。 今日を乗り越えれば、いよいよ大型連休が始まる。そう思うと、ほんの少しだけ力が入る気がした。 「起きよう、起きなければ」... 2025.08.08小説
小説第七十話「風に乗れた者たちの物語」 外野からバックホームが返ってくる。 捕球、そして滑り込む。 間一髪でセーフ。 空気が、一瞬止まったようだった。 俺はその場面を、息をのんで見つめていた。 ふたたび、鋭い打球が外野へ舞っていく。 次に何が... 2025.08.07小説
小説第六十九話「真白な世界に刻まれた約束」 土砂降りの中、俺はどこかの講習会場にいた。 靴はびしょ濡れで、足元が重い。 会場にはちらほら顔見知りもいたが、なぜここにいるのか思い出せなかった。 講義が始まるらしい。スライドに映し出されたのは、見覚えのある“顔”だった... 2025.08.06小説
小説第六十八話「怒りを力に」 気がつくと、さっきまでいた世界の記憶が抜け落ちていた。 何をしていたのか、誰と話していたのかすら思い出せない。 ただ、気づけば朝だった。 もうすでに身体は重く、疲労がまとわりついている。 あぁ、あの場所には行きたく... 2025.08.05小説
小説第六十七話「定まる視点、揺れないシートポジション」 俺はスポーツカーに乗ろうとしていた。 シートに体を沈めてみるが、どうにも落ち着かない。 純正のままでは、どうやら俺の体型には合わないらしい。 店員が「これ、交換できますよ」と言って、手際よくシートを外し、別のシートを持っ... 2025.08.04小説
小説第六十六話「静かな日曜日に、心は動く」 昨夜の心地よい疲労感が、まだ体にやわらかく残っていた。 全身にほのかな筋肉痛があるが、それすらも悪くない。 深く、よく眠れた。そういう朝は、それだけで一日が整って見える。 昨日の光景が、ふとした瞬間に浮かんでくる。 ... 2025.08.03小説
小説第六十五話「夜空に咲いた、屋台の絆」 昨夜は比較的よく眠れた気がする。 窓の外では、朝早くからセミたちの大合唱が響き渡っていた。 まるで誰かに聴かせるために、練習しているかのような情熱を感じる。 今日は土曜日。 そして、花火大会の日だ。 俺は屋台... 2025.08.03小説
小説第六十四話「聴くこと、それが僕の正義だった」 戦いは、あの世界でも、この世界でも起こりうる。 そしてそこに生まれる「正義」は、時に人を突き動かし、時に心を壊す。 今日から八月。金曜日の朝。 目覚めは悪く、夢の続きを引きずるような重たい気分だった。 とにかく顔を... 2025.08.01小説