第三十一話「欲しいのは涼しさ、手に入れたのは汗とスパイス」

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「思い描く内容がどんなものであれ、まだ起きていないのなら、それは妄想です。」

ーー草薙龍瞬『これも修行のうち』

日曜日の朝は、どこか空気が違う。

それは単に俺が二度寝したからかもしれないし、あるいは地球が今日はちょっと優しいモードになっているのかもしれない。

普段より二時間多く寝た。

おかげで体が軽い。窓を開けると、ひんやりとした風が部屋に入り込み、俺の顔を撫でた。

あぁ、これは山日和だな。決まりだ。今日は北の山地へ行こう。

出発準備は万端。

荷物は最小限、けれど心は最大級にウキウキしている。

山に向かう前に、少しだけ海を見ていこう。俺にはどうしても、それが必要だった。

海は今日も穏やかだった。

海鳥が鳴いている。まるで「いってらっしゃい」とでも言っているかのように。

ありがとうよ。じゃ、行ってくるわ。

車に燃料を入れていると、ふと気づく。

「あ、オイル交換の時期だっけな……ま、帰ってからでいいか」

こういうところが俺の“だいたい人生”の真骨頂だ。

日曜日の道は思ったより空いていて、北へと向かう道はひたすら真っすぐ。

気を抜くと心まで真っすぐ抜けそうになる。

最近の車は自動運転機能付き。

便利なもんだ。でも任せきりにしちゃいけない。

「結局、人生も運転も、自分の手でハンドル握らなきゃな」なんて、ちょっと名言風に考えてみたりして。

今日はラジオじゃなく、平成の懐かしソングを流してみる。

イントロが流れた瞬間、口が勝手に歌い出す。

不思議だよな。音楽って、記憶の押し入れから一気にいろんなものを引っ張り出してくる。

北の山地に着いた。

山は……暑い。想定外に暑い。

「おい、標高って涼しいんじゃなかったんかい」と小さくツッコミを入れる。

目的地のアウトドアショップは、まさに俺の“物欲の森”だった。

最新ギア、軽量テント、折りたたみ焚火台、コンパクトな非常食セット……

欲しい。全部欲しい。いや、必要だ。たぶん必要だ。もしかしたら必要になるかもしれない。

でも財布の中は現実を突きつけてくる。

「お前の予算は、火打ち石レベルだろ?」

くぅぅ……また来るよ、給料日後にな。

アウトドアショップを出ると、ほんのりスパイスの香りが風に混じって漂ってきた。

ふと顔を上げると、通りの向こうにスープカレーの店を見つけた。

歩き疲れた体に、その香りはやさしく誘ってくる。

ちょっとしたこだわりの店なのかもしれない。

看板には「※スープカレーは“カレー”ではありません」と書かれていた。

なるほど、そういう矜持なのだろう。

確かに、ただのカレーとは一線を画す料理だ。

たっぷりの野菜と、奥深いスープ。

スパイスの香りが立ち上がるその一皿は、食べものというより、ひとつの風景のようでもある。

北海道で生まれ、独自の進化を遂げたスープカレー。

これはこれで、ひとつの完成された世界なのだ。

俺は思う。

スープでも、カレーでも、その器に込められた想いがあれば、それでいい。

そして今、俺の目の前には、夏の元気がぎっしり詰まったその一杯がある。

あとは、じっくり味わうだけだ。

そして出てきたスープカレー。

スパイスの香りが鼻孔を直撃。スプーンを口に運ぶと——

「うまっ……辛っ……でも、うまっ!」

汗がじわじわ出てくる。

体の中がサウナになったような感覚。でもそれが心地いい。

外に出ると、太陽が本気を出していた。

アスファルトの上にモヤが立ちのぼり、夏の到来を高らかに告げている。

「おいおい、車が溶けるんじゃねぇか……」

そんな中、頼れる相棒は文句も言わず黙って走ってくれる。

灼熱のアスファルトをものともせず走り続けるタイヤ。そのたくましさに感動する。ほんとすごい。

こうして俺は、また海の見える街へ帰ってきた。

海を見ると、やっぱりホッとする。

今日はちょっと旅をしたような、でも確かに日曜日だった。

夏が始まった。

スパイスみたいに刺激的で、カレーみたいに熱い夏が来る予感。

よし、受けて立とう。

でもまずは、オイル交換しに行かないとな。

タケルとダイチ

おでの名前はタケルやで!

ちっこいのは最近、正社員になったダイチや。
旅好きなおでは後輩のダイチと
素敵な場所を
探して日々旅をしとるんやで。
ダイチと旅で見つけた
素敵な場所を
『タケルが行く』で紹介していくのでよろしくや!

ータケルの選手名鑑ー
選手名 タケル
ポジション 投手
背番号 16
利き手 右投げ左打ち
出身地 アルゼンチン
好きな食べ物 リンゴ

ーダイチの選手名鑑ー
選手名 ダイチ
ポジション 投手
背番号 14
利き手 右投げ右打ち
出身地 長崎
好きな食べ物 きびだんご

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