「事実なんて、どこにもない。ただ、それぞれの解釈があるだけだ。」
ーー凪良ゆう『流浪の月』
雨の音で目が覚めた。
まだ午前二時。
真っ暗な天井を見つめていると、昨日の出来事がするすると脳裏に浮かんできた。まるで走馬灯みたいに、けれど何もロマンチックじゃない、胃に重たい夜のシネマ。
不安、焦燥、少しの苛立ち。
あの場所での言葉、沈黙、態度。
いろんな価値観が交差する場では、心がときどき悲鳴をあげる。
「話せばわかる」なんて言うけれど、わからないことの方がずっと多い。
この世は、ほんとうに修行なのかもしれないなぁ……と、天井に問いかけてみた。
突然怒鳴る人。
無表情でこちらを突き刺すような視線を投げる人。
大きな声で自分の正しさを押し通そうとする人。
眠れないまま、やがてまた眠りに落ちた。
そして、朝。
今日も大雨。
梅雨らしくなってきた。
俺はまた1時間かけて、あの場所へ向かう。
車の揺れと雨のリズムに揺られながら、今日は「怒り」について考えていた。
なぜ人は怒るのか?
支配欲?ストレス?はたまた……趣味?
怒ると強くなる、そんな世界がマンガにはある。
金髪になったり、巨大化したり、空まで飛べたり。
でも現実の世界には「アンガーマネジメント」なんて言葉がある。
怒りを管理する。
怒りと上手に付き合う。
それが、大人ってものらしい。
俺だって怒るときはある。
でもその怒りが誰かを傷つけたら、それはただの暴力だ。
怒りは、使い方を間違えれば、火種になる。
争いに、戦争に……。
でも、正しく使えばきっと、怒りは武器にも盾にもなる。
気がつけば、俺はいつもの「あの場所」に着いていた。
外は相変わらずの土砂降り。
この場所で、俺は毎日「感情のトレーニング」をしている。
怒りの感情に飲み込まれないように。
やがて俺の髪がほんのり白くなってきたのも、きっとその成果だろう。
…いや、老化か。
スーパー○○○人ゴッド——その領域に、少しだけ近づいた気がした。
今朝も、鐘の音とともに始まる。
まずは朝の体操。これが午前中唯一の運動。
……そう思っていたら、昼の鐘。
ダッシュでうどん小屋へ!
これが、今日いちばんの運動だ。
このダッシュで、たぶん怒りも置き去りにできる。
怒りは、時に力になる。
でも、使い方を誤ると、すべてを壊す。
だからこそ——
怒りに飲まれそうになったら、
思いっきり空に向かってこう叫べばいい。
「クリリンのことかぁーーーーー!!!」
たぶんそれだけで、少しだけ、救われるから。
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