「ビスケットの缶にはいろんなビスケットがつまってて、好きなのと好きじゃないのがあるでしょ?それで先に好きなのどんどん食べちゃうと、あとあまり好きじゃないのばっかり残るわよね。私、辛い事あるといつもそう思うのよ。今これやっとくと後になって楽になるって。
人生はビスケットの缶なんだって」
ーー村上春樹「ノルウェイの森」
朝、鳥たちの大合唱で目が覚める。
カーテンを開けると、曇り予報を裏切るように、太陽がほんのりと顔をのぞかせていた。
「今日はマルシェの日だ」
胸がすこし高鳴る。
荷物の最終確認はばっちり。
助手席には、カピバラのタケルとダイチが並んで乗り込んでいる。
「さぁ、出発しようか」
会場は車屋さん。
広々とした敷地に、次々と集まってくる出店者さんたち。
社員さんたちも出社し、元気なあいさつと笑顔が飛び交う。
「なんて気持ちのいい場所なんだろう」
どこか、あの職場とは違う。
比べる必要もないけれど、ここの空気はほんとうにやさしい。
曇り空ながらも、空気は湿気をたっぷり含んでいた。
水分補給は忘れずに。
設営を終えると、いよいよマルシェスタート。
タケルとダイチが、お客様に元気よくごあいさつ。
「おはようございます! いらっしゃいませ〜!」
俺も負けていられない。
車を見に来た人、整備に来た人、マルシェ目的で来た人――
今日もたくさんの出会いがあった。
こうして場をつくってくれる車屋さんには、本当に感謝しかない。
気温はじわじわと上がっていく。
共に出店する仲間のお店で、エネルギーをチャージ。
これもマルシェの醍醐味だ。
無事に一日を終えた。
体はすっかり熱をもっているけれど、心には爽快感が満ちている。
余った氷で氷水をつくって、ごくり。
「う、うまい…」
自然と声が漏れた。
この夏は、熱中症に気をつけないといけないな。
搬出作業を終えて、家路へ。
帰り道は渋滞。
だけど、焦らない。
この一日を台無しにしないためにも。
「家に帰るまでが俺のマルシェだ」
帰宅。
荷物を車から降ろして、洗い物に取りかかる。
…その前に、ちょっとだけプロ野球の結果をチェック。
今日は交流戦の最終戦だったはず。
「お、勝ってるねー」
この暑い中、お疲れさまでした。
俺も、最後までやりきろう。
タケルとダイチも、お疲れさま。
今夜はゆっくり休もうな。
マルシェの終わり際に買ったピザを晩ごはんにする。
これが、ほんとうにうまいんだよなぁ。
「タケル、ダイチ、食べたけりゃこっちおいで!」
なんて、いい一日だったのだろう。
今日出会ったすべての方々に、ありがとう。
また会える日まで、心を込めて。
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