第十五話「うどん券の悲劇」

小説
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やってみないとわからないことはたくさんあるからな」

ーー宮島未奈『成瀬は天下を取りにいく』

やっと金曜日。

今週は体感で10日くらいあった気がする。いや、実際はまだ金曜。あと一日あるのが現実。

カーテンを開ける。

天気予報は雨だったが、空はまだ降り出していない。

外では小鳥たちが合唱している。どこまでも明るい。

ワイシャツに袖を通し、何気なく胸ポケットに手をやると……そこには、湿った、黄色い紙の塊。

まさかと思った。

慎重に広げてみると、見事なまでにバラバラ。

あぁ……うどん券だ。

先日買った10枚綴りのうどん券を入れたまま、ワイシャツごと洗ってしまったらしい。

「新手のジグソーパズルかよ……」と呟いたが、誰もツッコんでくれない。ひとりの朝だ。

これが「うどんを控えろ」という天からの啓示なのか?

それとも、ただの凡ミスか?

どっちでもいい。

今日のサブタイトルは決まった「うどん券の悲劇」。

さあ、今日もあの場所へ。

うどん小屋のある、戦場のような職場へ。

朝の一歩を踏み出すたびに、空気が変わる。

この場所には不思議な圧がある。重く、息が詰まりそうなほど。

「オラに元気を分けてくれ」と小声で呟き、職場へ足を踏み入れる。

昼休み。

俺は当然、うどん小屋を目指した。

うどん券は、もうない。でも、どうしても食いたい。

引き出しを開けると……そこに奇跡が起きた。

1枚のうどん券が、ひらり。

過去の自分が、未来の俺に残してくれた希望だった。

うどん小屋には、あの場所にいるたくさんの人が集まってくる。

疲れ切った目をした人。

「まだまだやれるぞ」と拳を握る人。

グチを言い合ってる人。

やたらとテンションが高い人。

そして名物・やれやれおじさん。

今日も、もちろん言っている。

「やれやれ……この間の天ぷら、衣しかなかったんだぞ」

「やれやれ……このツユ、ぬるいんじゃないか……」

毎日やれやれ言い続けているこの人。

あんたは承太郎か。

心の中で、全力でツッコんでおく。

でもみんな、手にしているのは紙のうどん券。

この令和に、紙。しかも結構しっかりした厚紙。

タイムスリップしたかのようなうどん小屋だけが、ホッとできる場所だ。

俺はカウンターにうどん券を差し出した。

そこにはもう、いつものおばちゃんの姿はない。

彼女が消えてから、もう数ヶ月。どこで何してるんだろうな。

戻ってきたら、この空気の変化に驚くだろう。

出てきたうどんはやっぱり今日も、コシがない。

でも、うまいんだ、これが。

朝の「うどん券の悲劇」はもう忘れた。

終わりよければすべてよし。

午後も頑張ろう。夜はプロ野球だ。

その前に……歯医者。俺の試練は続く。

やれやれだぜ。

タケルとダイチ

おでの名前はタケルやで!

ちっこいのは最近、正社員になったダイチや。
旅好きなおでは後輩のダイチと
素敵な場所を
探して日々旅をしとるんやで。
ダイチと旅で見つけた
素敵な場所を
『タケルが行く』で紹介していくのでよろしくや!

ータケルの選手名鑑ー
選手名 タケル
ポジション 投手
背番号 16
利き手 右投げ左打ち
出身地 アルゼンチン
好きな食べ物 リンゴ

ーダイチの選手名鑑ー
選手名 ダイチ
ポジション 投手
背番号 14
利き手 右投げ右打ち
出身地 長崎
好きな食べ物 きびだんご

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