小説第七十六話「地球の呼吸に抱かれて」 台風が近づいている。 日本近海で生まれた渦は、目に見えぬ力で大気をかき回し、ひとつの世界を揺らしている。 最近では、突如として姿を現す台風も珍しくない。 地球温暖化のせいだと人は言う。 けれど思う。 地球の歴... 2025.09.04小説
小説第七十五話「つまらないはおもしろい」 つまらないは 隙間のようだ 誰も気づかぬ 影のようだ けれど その中に 小さな芽がひっそりと息づいている なぜつまらないは つまらないのか それを考えるとき すでに心は遊んでいる 退屈は おもしろ... 2025.09.03小説
小説第七十四話「木陰のベンチと風の約束」 ふたたびここに言葉を置く 身体がやけに重たくて 地球の重力が少しだけ増したような気がする 待つ人を思い浮かべながら 日差しの下、木陰のベンチに腰を下ろす まだ時間はある だから、ただ待つ 夏の日差... 2025.09.02小説