夢の中で、俺はモフモフのトイプードルと全力で追いかけっこをしていた。まるで雲が転がっているような、ふわふわの毛並み。あれが本物だったのか、幻だったのかは知らない。でも目が覚めた時、部屋に残ったぬくもりのような気配に少しだけ救われた気がした。
快晴の土曜日。空は眩しすぎて、世界が白く焼けそうだった。
バイクの鍵を回す音が、どこかで聞いた鐘の音のように心を跳ねさせる。
行く先は、下津井。瀬戸大橋を一望できるあの小さな港町。海と橋と空がつながって見えるあの場所に、今日は呼ばれている気がした。
潮の香りを含んだ風が、俺の中のどこかを掃除していく。
宇野港では、深呼吸。これが酸素ってやつか、と改めて思うくらい、胸の奥まで空気が染みこんでいった。海は、やっぱりいい。何も言わないくせに、何もかもを聞いてくれてる感じがする。
だけど街中に戻ると、一転して渋滞地獄。
あの無言の優しさから、クラクションと排気ガスの戦場へ。ギアチェンジするたびに、俺の気持ちもアップダウン。
帰ってからは、バイクのチェーンをみがいた。
汗だくになりながら、リンク一つひとつに語りかけるように。ピカピカになったチェーンが、「お前もがんばれよ」って言ってる気がした。
シャワーで汗を流す頃には、少しだけ今日の自分を好きになれてた。
それにしても、まだ5月だというのに暑すぎる。
天気が良すぎるのも考えものだな。
昼は近所のラーメン屋で、いつもの醤油ラーメン。
ふと、あの社食のうどんおばちゃんを思い出した。あの笑顔、あの「今日はトッピング豪華よ」のひと言。あの人はいったい、どこへ行ったんだろう。
午後は車を洗車機にかけて、
イベントで使う珈琲豆を買いに行った。鼻の奥に残る深煎りの香り。これだけで、何かが始まりそうな気がする。
イベントの準備もそろそろ本格的にやらねば。
要らないものは捨てた。断捨離ってやつだ。部屋も、頭の中も、軽くしておかないと。
外ではどこもイベント三昧。
あっちではジャズフェス、こっちではマルシェ。みんな何かを始めている。
それが羨ましくて、でも俺も負けられなくて――
俺は俺の行き方で行こうと思った。どこかで、誰かの背中を押せるような形で。
明日はどんな夢を見るんだろう。
モフモフか、それとも何かもっと変なものか。
もしかしたら、それもまた「行く」ってことかもしれないな。
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